セッション情報 研修医発表(卒後2年迄)

タイトル 研10:

乳癌術後に対してAnastrozole治療経過中に非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を発症した一例

演者 澤瀬 寛典(長崎大学病院 消化器内科)
共同演者 内田 信二郎(長崎大学病院 消化器内科), 荒木 智徳(長崎大学病院 消化器内科), 塩田 純也(長崎大学病院 消化器内科), 高原 郁子(長崎大学病院 消化器内科), 吉村 映美(長崎大学病院 消化器内科), 妹尾 健正(長崎大学病院 消化器内科), 加茂 泰広(長崎大学病院 消化器内科), 本田 琢也(長崎大学病院 消化器内科), 柴田 英貴(長崎大学病院 消化器内科), 田浦 直太(長崎大学病院 消化器内科), 市川 辰樹(長崎大学病院 消化器内科), 中尾 一彦(長崎大学病院 消化器内科)
抄録 【はじめに】乳癌に対して使われる薬剤のうち、Tamoxifenは非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の誘因となることは以前より知られている。一方、アロマターゼ阻害薬は抗エストロゲン作用を有するもNASHを発症したとの報告は少ない。今回、乳癌術後治療としてアロマターゼ阻害薬であるAnastrozoleを内服中にNASHを発症した一例を経験したため報告する。【症例】66才、女性【現病歴】以前に糖尿病、高血圧の指摘なし。2007年4月、右乳癌に対して当院外科にて乳房切除術を施行された(病理:invasive ductal carcinoma、papillotubular)。腫瘍組織のエストロゲンレセプターが陽性であったため、同年9月よりAnastrozoleの内服を開始した。同年10月頃より肝機能異常が出現したが軽度であったため血液検査、腹部画像検査を行いながら内服を継続した。2011年9月より体重が2kg漸増、12月血液検査にてAST 71IU/l、ALT 90IU/l、ALP 444IU/l、γGTP 84IU/lと肝機能の増悪傾向を認めたため当科外来紹介、精査目的に当科入院となった。【経過】153.7cm、62kg、BMI 26.2。75gOGTT2時間値288mg/dl、HbA1c (JDS) 6.7%であり糖尿病型と診断、HOMA-IRは2.2であった。肝炎ウイルス、抗核抗体は陰性。腹部単純CTでの肝/脾値は2007年術前と比較すると徐々に低下し脂肪肝の進行を認めた。経皮的肝生検では肝小葉に小滴性と大滴性の混在した中~高度の脂肪沈着、軽微な風船状変性、少数の巣状壊死を、中心静脈周囲から部分的にbridgingを形成するperisinusoidal fibrosisの像を認めNASH(G1/F2>3)と診断した。Anastrozole中止は乳癌再発のリスクが高くなると考え、内服は継続する方針とした。栄養指導、運動食事療法を継続し、体重62kgより58kgへ減少、それに伴い肝機能も改善、乳癌の再発もなく経過観察中である。【結語】AnastrozoleによりNASHが誘発された一例を経験した。Anastrozoleに伴うNASHの報告は少ないが、本症例のようにNASHを発症する可能性があり、アロマターゼ阻害薬内服症例に対しても、体重、中性脂肪や肝機能に注意深い経過観察が必要と考えられた。
索引用語 NASH, 薬剤性