セッション情報 シンポジウム「消化器疾患における新規治療法」

タイトル S2-11:

早期胃癌に対するESDの新しい局注剤:カルボキシメチルセルロースの有用性

演者 渡邊 龍之(産業医科大学 第3内科)
共同演者 山崎 雅弘(産業医科大学 第3内科DELIMITER九州労災病院 門司メディカルセンター 内科), 久米  恵一郎(産業医科大学 第3内科), 芳川 一郎(産業医科大学 内視鏡部), 原田 大(産業医科大学 第3内科)
抄録 【目的】ESDの難易度の高さは、粘膜下層の剥離操作の困難度に左右される。したがって、剥離操作を安全かつ確実にするためには粘膜下層の十分な隆起を長時間得ることが必要であり、その方法として我々は高粘稠な局注剤:カルボキシメチルセルロース(sodium carboxymethylcellulose:SCMC)を開発し、動物実験でその有用性を報告した(Yamasaki M et al.2006)。当院の倫理委員会で承認後、SCMCを用いたESD(ESD-SCMC)を行っている。まだ少数例であるが、ESD-SCMCの有用性について報告する。
【方法】2012年5月から8月までにESD-SCMCを行った胃癌8例を対象とした。基礎実験よりSCMCの至適濃度は、1.5%とした。手技は、グリセオールを病変の周囲に局注して全周切開を行った。その後、インフレーターを用いて25G穿刺針で病変の粘膜下層に1.5% SCMCを局注した。粘膜下層を貝柱状に十分に隆起させた後、ITナイフ2で剥離を行った。ESD終了直後の切除標本断面の高さ、治療時間、一括切除率、偶発症、SCMCの副作用を検討した。
【結果】病変部位はM 5例、L 3例であり、平均切除標本長径は45.6 mm(35-70)であった。切除標本断面の高さは平均7.5 mmで、切除標本にSCMCの残存を認めた。SCMC局注開始から剥離終了までの時間は、平均74. 5分(37-146)で、一括切除率は100%であった。後出血を1例に認めたが、穿孔やSCMCによる副作用、ESD後潰瘍治癒の遅延も認められなかった。
【結論】1.5% SCMCは粘度が高いため、粘膜下層が隆起した状態が長時間保持された。そのため、粘膜下層への侵入が容易になり、良好なcounter tractionが得られた。また、SCMCによる副作用は認められず、安全な局注剤と考えられた。ESD-SCMCは、ESDを安全かつ確実にするための有用な方法と思われ、今後症例を積み重ねてさらなる有用性を検証したい。
索引用語 粘膜下層剥離術, カルボキシメチルセルロース