セッション情報 専修医発表(卒後3-5年迄)

タイトル 専16:

腸閉塞を契機に発見された虫垂杯細胞カルチノイドの一例

演者 武田 輝之(福岡大学筑紫病院消化器内科)
共同演者 青見 賢明(福岡大学筑紫病院消化器内科), 高津 典孝(福岡大学筑紫病院消化器内科), 平井 郁仁(福岡大学筑紫病院消化器内科), 大津 健聖(福岡大学筑紫病院消化器内科), 八坂 太親(福岡大学筑紫病院消化器内科), 松井 敏幸(福岡大学筑紫病院消化器内科), 山口 良介(福岡大学筑紫病院外科), 三上 公治(福岡大学筑紫病院外科), 前川 隆文(福岡大学筑紫病院外科), 池田 圭祐(福岡大学筑紫病院病理部), 岩下 明徳(福岡大学筑紫病院病理部)
抄録 症例は65歳女性.平成24年5月上旬,腹痛,嘔吐を主訴に近医を受診.腹部造影CT検査にて,終末回腸を閉塞起点とし,同部位より口側の腸管の拡張を認め,腸閉塞と診断された.前医のCT検査では,回腸末端のリンパ節腫脹,虫垂の軽度腫大を認めた.精査加療目的に,同日当院紹介入院となった.入院時,腹部は軟,膨満し,全体に軽度の圧痛を認めた.血液検査では,炎症所見の上昇を認め,腹部単純X線検査では,小腸鏡面像を認めた.入院同日イレウス管を挿入した.改善後,ガストログラフィンにて造影検査を施行し,終末回腸に管外性の圧排と思われる粘膜下腫瘍様隆起を認め,管腔の狭小化を認めた.下部消化管内視鏡検査では,回盲弁は立ち上がりなだらかな粘膜下腫瘍様に隆起し,表面は正常粘膜に被覆されていた.隆起は鉗子で圧迫すると比較的可動性良好で,弾性軟であった.また,回腸へ内視鏡は挿入不可能であった.回腸の評価のため,経肛門的ダブルバルーン小腸内視鏡検査を施行した.回腸末端には管外からの圧排と考えられる粘膜下腫瘍様隆起を認め,同部位は超音波内視鏡検査で,低エコー腫瘤として描出され,一部モザイクパターンを呈していた.終末回腸の粘膜下腫瘍が原因による腸閉塞と考え,診断的治療目的に,腹腔鏡下回盲部切除術,リンパ節廓清を施行した.切除標本では虫垂は著明な壁肥厚を認め,周囲の脂肪織と一塊となっていた.また,回盲部は著明に狭窄していた.病理組織は虫垂原発の杯細胞カルチノイドであり,盲腸,終末回腸への浸潤を認めた.リンパ節転移陽性であり,術後化学療法行っている.虫垂杯細胞カルチノイドは,カルチノイド類似像と腺癌類似像の両方の特徴を有する稀な疾患である.本疾患の多くが,急性虫垂炎で発症し虫垂切除が施行され,病理組織にて診断されている.今回我々は,腸閉塞を契機に発見された虫垂杯細胞カルチノイドの一例を経験したので,文献的考察をふまえ報告する.
索引用語 虫垂杯細胞カルチノイド, 腸閉塞