セッション情報 シンポジウム「消化器疾患における新規治療法」

タイトル S2-12:

炎症性腸疾患患者に対するアドレノメデュリン療法

演者 芦塚 伸也(宮崎大学第一内科)
共同演者 仮屋 暢人(宮崎大学第一内科), 三宮 一朗(宮崎大学第一内科), 原口 大(宮崎大学第一内科), 三木 吾郎(宮崎大学第一内科), 星子 新理(宮崎大学第一内科), 松本 英丈(宮崎大学第一内科), 中島 孝治(宮崎大学第一内科), 稲津 東彦(宮崎大学第一内科), 北村 和雄(宮崎大学第一内科)
抄録 【背景】アドレノメデュリン(AM)は組織虚血障害により誘導され、強力な血管拡張作用を有する生理活性ペプチドである。近年、AMが心血管保護作用をはじめ、血管新生作用や抗炎症作用、抗菌作用など種々の生理機能を有する事が判明しており、炎症性腸疾患モデル動物に対する腸炎改善効果が報告されている。我々は難治性潰瘍性大腸炎(UC)患者に対するAM持続静注療法(臨床研究)を開始し、その有効性と忍容性に関して検討した。
【方法】[対象] 難治性(ステロイド抵抗性、依存性)UCで、免疫調整剤・生物学的製剤の使用が不適当な症例。[投与法] AM 1.5 pmol/kg/min、8時間/日、14日間。[評価] 活動性評価:臨床症状(血便、下痢、腹痛、発熱)と血液検査所見、内視鏡検査所見を基に、Disease activity index (DAI)およびSeo’s indexにて評価した。
【結果】[背景] 症例:7症例(9回)、年齢:57±10.6歳(37-68歳)、性別:男性4名・女性3名、病型:全大腸型 3名、左側結腸型 4名、入院時重症度:重症3名・中等度 4名、AM療法直前の重症度:重症 1名、中等症 6名。[評価項目]両項目において有意な改善を認めた。AM投与直前DAI: 8.9±1.3、Seo’s index:201.9±43.9。AM療法2週間後DAI 4.7±2.3、Seo’s index 165.7±49.3、12週後DAI 1.0±1.2、Seo’s index 111.4±12.2。[内視鏡所見] 7例中6例で炎症改善傾向が得られ、潰瘍の縮小~瘢痕化が認められた。著効例では広範囲潰瘍病変は網目状に瘢痕化した。[有害事象] 軽度の血圧低下と心拍数上昇以外の明らかな有害事象は認めなかった。
【総括】AM療法はUC患者においても大腸炎改善効果を示した。AMは生理活性ペプチドであり安全性が高く、炎症性腸疾患に対する新しい治療戦略として発展しうる可能性が考えられた。
索引用語 炎症性腸疾患, アドレノメデュリン