セッション情報 専修医発表(卒後3-5年迄)

タイトル 専51:

妊娠中に発症し胎児に腹水を認めた自己免疫性肝炎の1例

演者 伏見 崇(久留米大学内科学講座消化器内科部門)
共同演者 古賀 浩徳(久留米大学内科学講座消化器内科部門), 上妻 友隆(久留米大学産婦人科学講座), 有永 照子(久留米大学内科学講座消化器内科部門), 堀 大蔵(久留米大学産婦人科学講座), 嘉村 敏治(久留米大学産婦人科学講座), 佐田 通夫(久留米大学内科学講座消化器内科部門)
抄録 症例は30歳、女性。毎年、職場の健康診断を受けており、異常を指摘されたことはなかった。2011年10月の健康診断時に肝機能異常(ALT 80 U/L程度)を指摘されたが、11月には正常化していた。12月には第2子の妊娠が成立している。2012年3月初旬(妊娠14週頃)より皮膚そう痒感と不眠を自覚し、近くの産婦人科、皮膚科を受診したが、外用薬と抗ヒスタミン薬で経過観察となった。4月14日頃(妊娠20週5日)、同僚から黄疸を指摘され別の総合病院を受診した際、ALT 344 U/L、T. Bil 6.1 mg/dL、D. Bil 4.8 mg/dLと肝障害を指摘され、ウルソ600 mg/dayが開始された。その後、当院産婦人科を紹介された際、ALTは140 U/Lと改善していたものの、T. Bil 7.62 mg/dL、D. Bil 5.73 mg/dLと黄疸の悪化を認めたため、同日当科に紹介された。当科初診時、脂肪肝や器質的肝病変は指摘されなかった。4月20日、T. Bilは9.45 mg/dLまで上昇し、胎児にも腹水貯留が認められた。母体および胎児へのウイルス感染が疑われたが、肝炎ウイルス、サイトメガロ、ヘルペス、EB、パル ボB19など検索した範囲ではいずれも陰性であった。この時点で胎児の回復は見込めず、妊娠の継続が肝障害の増悪因子とも考えられたため、人工妊娠中絶が施行された。中絶後より黄疸は速やかに改善し、T. Bil 3.12 mg/dLまで低下したものの、ALTは58から180 U/Lへと再上昇したため、別の肝疾患が基礎にあると考え、5月7日、肝生検を施行した。その結果、肝組織中へのリンパ球を主体とした高度炎症細胞浸潤やロゼット様構造を認め、組織学的に自己免疫性肝炎(AIH)と診断した。さらに、当科初診時陰性であった抗核抗体の陽性化、HLA-DR4陽性などの所見も加味し、国際診断基準上「definite AIH」と診断した。治療はプレドニンを40 mg/dayから開始し、その直後より肝機能の著明な改善を認めている。一般に、妊娠中には自己免疫性疾患はむしろ寛解する傾向にあるが、本症例のように妊娠中に発症し、かつA型肝炎やパルボウイルスなどの感染が原因でない胎児腹水を合併したAIHの報告はなく、貴重と思われたので報告する。
索引用語 自己免疫性肝炎, 胎児水腫