セッション情報 研修医発表(卒後2年迄)

タイトル 研16:

低栄養状態からの脂肪肝による肝機能障害を伴ったCrohn病の1例

演者 西 智美(熊本大学大学院 消化器内科学)
共同演者 川崎 剛(熊本大学大学院 消化器内科学), 稲村 和紀(熊本大学大学院 消化器内科学), 野田 香菜(熊本大学大学院 消化器内科学), 鴻江 勇和(熊本大学大学院 消化器内科学), 吉丸 洋子(熊本大学大学院 消化器内科学), 渡邊  丈久(熊本大学大学院 消化器内科学), 福林 光太郎(熊本大学大学院 消化器内科学), 立山 雅邦(熊本大学大学院 消化器内科学), 庄野 孝(熊本大学大学院 消化器内科学), 直江 秀昭(熊本大学大学院 消化器内科学), 桜井 宏一(熊本大学大学院 消化器内科学), 田中 基彦(熊本大学大学院 消化器内科学), 宮本 裕士(熊本大学大学院 消化器外科学), 渡邊 雅之(熊本大学大学院 消化器外科学), 馬場 秀夫(熊本大学大学院 消化器外科学), 佐々木 裕(熊本大学大学院 消化器内科学)
抄録 症例は40歳男性。18歳時に統合失調症の診断で他院にて加療中であった。33歳時に小腸穿孔性腹膜炎のため回腸切除および人工肛門造設術を施行され、切除標本からCrohn病(小腸型)と診断された。5-ASA製剤と成分栄養剤で治療されていたが、統合失調症のため内服薬のコンプライアンスは不良であった。その後、人工肛門閉鎖術を受けたが、イレウスを繰り返し、その度毎に保存的治療で軽快していた。H24年2月から頻回の嘔吐、腹部膨満感が出現し、3月末にイレウスの診断で前医に入院した。絶食と末梢静脈栄養で保存的に治療されていたが改善なく、入院10日目よりトランスアミナーゼの上昇、入院27日目よりビリルビンの上昇を認めるようになった。入院31日目にイレウス管を挿入し、39日目から中心静脈カテーテルからの完全静脈栄養が開始された。入院45日目の血液検査ではT-Bil 11mg/dlと上昇したため精査加療目的で当院に転院となった。肝機能障害の原因として飲酒はなく、肝炎ウイルスマーカー、抗核抗体、抗ミトコンドリア抗体はいずれも陰性であった。画像検査では、前医入院時の肝脾CT値比0.75から転院時の肝脾CT値比-0.12と著明な肝臓のCT値の低下を認めた。当院転院後にHarris-Benedictの式からエネルギー必要量を2500kcal/日に設定し、高カロリー輸液を開始したところ、T-Bil 1.4mg/dlまで低下した。イレウスはCrohn病からの小腸狭窄が原因であり、肝機能障害の改善後に3カ所の小腸狭窄に対して小腸狭窄形成術を行った。術中に肝生検を行い、病理所見で肝臓には大滴性~中滴性の脂肪沈着を20%程度に認めた。本症例では、統合失調症という基礎疾患がある故にカテーテルの自己抜去のリスクを回避したために、カロリー投与が不十分であった。その結果、高度の低栄養状態が肝臓の脂肪変性を引き起こしたと考えられた。今回、低栄養状態から著明な脂肪肝による肝機能障害を発症したCrohn病の1例を経験したので、文献的考察をふまえ報告する。
索引用語 脂肪肝, クローン病