セッション情報 一般演題

タイトル 101:

ウルソデオキシコール酸が効果的であったと考えられた摂食障害に伴う遷延する肝障害の1例

演者 松本 修一(福岡徳洲会病院 肝臓内科)
共同演者 滝澤 直歩(福岡徳洲会病院 総合内科), 児玉 亘弘(福岡徳洲会病院 総合内科), 松林 直(福岡徳洲会病院 心療内科)
抄録 摂食障害患者に肝障害を認めることはしばしば経験するがその機序や肝組織像など明らかになっていないことが多く,摂食障害の治療とともに軽快する例が多いため肝障害に対して治療介入する機会はほとんどない.今回,摂食障害の治療初期より肝機能障害を認め治療中も遷延したため肝の組織学的評価を行いウルソデオキシコール酸(UDCA)の内服を試した事例を経験したので報告する.症例は42歳女性.20年前より摂食障害に罹患.やせのため日常生活が困難となり当院心療内科を受診して入院.入院時BMI 12.1kg/m2であった.入院時の検査成績でALT 5700IU/L,ALP 2750IU/L,T-Bil 5.3mg/dL, D-Bil 3.1mg/dL, PT-INR 64%,P 3.0mg/dLと著明な肝障害を認めた.腹部超音波検査で肝に明らかな異常は認めず,血清学的にウイルス肝炎は否定的であったため摂食障害の何らかの病態が関与した肝障害を第一に考え,慎重に栄養を与えながら安静にて経過観察した.入院後ALT値が300IU/L程度まで低下したところで輸液量を減量すると低血糖となりALT値が1000IU/L程度まで再上昇するというエピソードを2度繰り返した.2度目の肝障害増悪時(入院から約8週後でALT値691IU/Lの時)に肝障害の精査目的に肝生検を施行したところ,軽度のうっ血像を認める他に明らかな炎症細胞の浸潤や肝細胞壊死の所見は認めなかった.組織像はHE染色で胆汁うっ滞像と区別がつかず肝庇護の観点からもUDCAの内服を開始したところALT値,ALP値共に速やかに低下し,約3週間後には正常化を認めた.本症例の肝障害は,肝組織からはうっ血が関与していた可能性が示唆され,UDCAの効果があった点からは胆汁うっ滞があった可能性が示唆された.また,経過中の肝障害の増悪は低血糖発作の後に起こっており,低血糖により何らかの循環障害がおこりその結果肝胆道系酵素の上昇を招いたと考えられた.
索引用語 摂食障害, 低血糖