セッション情報 一般演題

タイトル 110:

肝門部型肝細胞癌に対するマイクロバルーンカテーテルを使用した肝動脈化学塞栓術の検討

演者 工藤 康一(済生会熊本病院 消化器病センター)
共同演者 古賀 毅彦(済生会熊本病院 消化器病センター), 塩屋 公孝(済生会熊本病院 消化器病センター), 上川 健太郎(済生会熊本病院 消化器病センター), 近澤 秀人(済生会熊本病院 消化器病センター), 今村 治男(済生会熊本病院 消化器病センター), 多田 修治(済生会熊本病院 消化器病センター), 安田 剛(済生会熊本病院 中央放射線部)
抄録 目的)肝門部に存在する肝細胞癌へのTACE(経カテーテル肝動脈化学塞栓術)治療は、栄養動脈が中枢側の太い血管から分岐する多数の網目状の細血管であることが多く、薬剤が病変よりも末梢側へ流れやすいため治療効果が不十分になりやすい。このような例に対し、我々の施設ではマイクロバルーンカテーテルを使用し、末梢側の血流を停滞させながら肝門部の栄養血管へ薬剤を流す工夫を行っている。今回、この新しいデバイスを用いたTACEの一次治療効果と臨床経過について検討を行った。対象)マイクロバルーンカテーテルを使用しTACEを行った6名(男性5名、女性1名、平均年齢78.2才)を対象とした。使用したマイクロバルーンカテーテルは、4例が3.3Fr.イーグマン、1例が3.3Fr.マイクロサイトである。全例で過去に同一病変に対する通常のTACE治療が行われており、通常TACE群(A群)とマイクロバルーンカテーテル使用TACE群(B群)について、薬剤の貯留状況、治療前後の採血データ、同一病変における無再発期間、治療関連合併症の発生について比較検討を行った。結果)薬剤の貯留については、全例B群の方が薬剤貯留は良好であった。治療前後の採血データは、A群でプロトロンビン時間の有意な延長が見られた(p<0.05)。また肝胆道系酵素はA群で変動が大きい傾向にあるが群間の有意差はなかった。平均無再発期間は、A群3.3(1~9)ヶ月、B群16.6(6~31)ヶ月でB群において有意に無再発期間が長かった(p<0.05)。治療関連合併症は、B群で2例(33.3%)に術後bilomaの発生を認めた。結語)マイクロバルーンカテーテルを利用したTACEは手技的に煩雑だが、中枢側の細い網目状血管が栄養動脈となっている場合、良好な局所制御を得るのに有効な方法である。背景肝へのダメージも通常TACEと比べ少ない。しかし通常TACEよりもbiloma形成などの特殊な合併症を起こし易い可能性があり、今後は適切なバルーンの使用法や動注薬剤の投与法など臨床的検証が必要と思われる。
索引用語 マイクロバルーンカテーテル, 肝動脈化学塞栓術