セッション情報 一般演題

タイトル 152:

高齢で発症し腸管穿孔を合併した難治性不全型ベーチェット病の1例

演者 工藤 哲司(公立学校共済組合九州中央病院消化器内科)
共同演者 檜沢 一興(公立学校共済組合九州中央病院消化器内科), 畑田 鉄平(公立学校共済組合九州中央病院消化器内科), 守永 晋(公立学校共済組合九州中央病院消化器内科), 峰 真理(公立学校共済組合九州中央病院病理), 江崎 幹宏(九州大学大学院病態機能内科), 松本 主之(九州大学大学院病態機能内科), 飯田 三雄(公立学校共済組合九州中央病院消化器内科)
抄録 腸管穿孔を合併し治療に苦慮した高齢発症の不全型ベーチェット病を経験したので報告する。症例は83歳、男性。1年前から難治性の口内潰瘍が出現し、10日前から排便時に下血を認め当科入院となった。陰部に潰瘍があり、ESR 66mm/h、WBC 9610/μl、CRP 4.3mg/dlと炎症反応を認めた。大腸内視鏡検査では回腸から直腸に類円形の潰瘍が多発し、特にS状結腸の潰瘍は大きく深掘れ状だった。生検組織検査では特異的所見はなく、上部消化管内視鏡と経口小腸造影検査では終末回腸以外に潰瘍は認めなかった。各種自己抗体や培養検査、CMV-C7HRPやHLA-B51 は陰性で、眼科でも異常はなかった。しかし入院後に発熱と両下肢関節炎が出現し、毛嚢炎様皮疹も認めた。3主症状(口腔内潰瘍、皮膚病変、陰部潰瘍)と2副症状(関節炎、消化管病変)より不全型ベーチェット病と診断した。第2病週にmesalazine 3g、第3病週にprednisolone (1mg/kg)を開始し炎症反応は消失した。しかし第4病週には直腸潰瘍の出血のため止血鉗子による処置を要し、ステロイド漸減とともに炎症反応が再燃した。第8病週の内視鏡検査にて下部大腸の潰瘍は増悪しており、直腸にはポケット状の深い潰瘍を認めた。中心静脈栄養のうえinfliximab (IFX)を開始したが、第11病週に腹痛が出現し腹部CTにて腹腔内に遊離ガスを認めた。腸管潰瘍の穿孔と判断したが、腹膜刺激症状は乏しく保存的治療の方針とした。第14病週のCTにて遊離ガスは消失しており、azathioprineを併用しIFXを継続した。第17週の内視鏡で大腸潰瘍に改善はなかったが、陰部潰瘍は瘢痕化していた。第18病週の経口小腸検査でも回腸の潰瘍は縮小していたが、肛門痛が増強したため横行結腸に双孔式人工肛門を造設した。術後食事を再開でき、退院後IFXを継続した。以後ステロイドは漸減中止でき、手術2年後の大腸内視鏡検査にて潰瘍は欠損治癒していた。
索引用語 結腸潰瘍, 結腸穿孔