抄録 |
【はじめに】当科では血小板低下例に対し部分的脾動脈塞栓療法(PSE)後に肝細胞癌癌(HCC)治療を施行している.今回PSEを繰り返しながらHCC治療を行い,StageIV-Bになった時点で再度PSEを行い分子標的薬治療が可能となった症例を経験したので,当科におけるPSE+肝癌治療40例の検討も含め報告する.【症例】71歳,女性.Child-Pugh6点(A),肝障害度(B).2008年3月S7HCCをRFA,2009年2月S6HCCをRFA,2010年7月S2,3,6HCC多発しTAIを施行.血小板2.1万まで低下したためPSE+TACE目的にて紹介された.1,2回目のPSEはTAI,TACE目的,3回目は2011年10月で腹腔内にリンパ節転移を多数認めたため,血小板数を8.5万まで上昇させた上で分子標的薬を導入した.分子標的薬は副作用と経済的理由で中止したが,その後もTACE,RFAを追加しAFPが正常化した. 【PSE+肝癌治療の検討】RFA目的14例,肝持続動注目的21例,TACE目的2例,分子標的治療目的2例,転移性肝癌治療目的1例.血小板低下を伴うHCCに対しRFAを安全に施行するためには、血小板は5万以上あることが望ましい.PSE+RFA後にIFNを施行することにより異所性再発が抑制される可能性が考えられた. 血小板数7万以下の進行HCCについてはPSEを併用することにより治療継続が可能になり予後が改善する可能性があることを我々は今までに報告してきた.分子標的薬を使用するには血小板数7.5万以上が推奨されており,本症例を含めて2例にPSEを併用していた.C型肝硬変に合併した胆嚢癌の肝転移例に対してもPSEは有用であった.【結語】PSEは分子標的薬治療,転移性肝癌を含め,さまざまな肝癌治療の補助的治療として有用であった. |