セッション情報 専修医発表(卒後3-5年迄)

タイトル 専06:

低蛋白血症を契機に診断しえた十二指腸出血の一例

演者 東郷 政明(長崎大学病院消化器内科)
共同演者 松島 加代子(長崎大学病院消化器内科), 荒木 智徳(長崎大学病院消化器内科), 福田 浩子(長崎大学病院消化器内科), 卜部 繁俊(長崎大学病院消化器内科), 庄司 寛之(長崎大学病院消化器内科), 橋口 慶一(長崎大学病院消化器内科), 南 ひとみ(長崎大学病院消化器内科), 塩澤 健(長崎大学病院消化器内科), 赤澤 祐子(長崎大学病院消化器内科), 山口 直之(長崎大学病院消化器内科), 大仁田 賢(長崎大学病院消化器内科), 磯本 一(長崎大学病院消化器内科), 竹島 史直(長崎大学病院消化器内科), 中尾 一彦(長崎大学病院消化器内科)
抄録 【はじめに】蛋白漏出性胃腸症は原因が特定できず治療困難となる症例も少なくない。今回、我々は低蛋白血症を契機に診断・治療しえた十二指腸出血の1例を経験したので報告する。 【症例】64歳男性、数年来持続する低蛋白血症と貧血のため近医にて経過観察されていた。C型慢性肝炎、心房細動、慢性心不全、僧房弁置換術後の既往があり、ワーファリンを内服していた。浮腫および腹部膨満感の増強を認めたため、近医受診したが採血・検尿にて肝硬変やネフローゼ症候群は否定的であった。上下部内視鏡では有意な所見を認めず、小腸からの蛋白漏出性胃腸症が疑われ、精査加療目的に当院紹介となった。入院時現症では、腹部膨隆を認め、両下腿に軽度の浮腫を認めていた。入院時採血検査ではHb 6.6 g/dl、TP 4.9g/dl、Alb 2.2g/dlと貧血および低蛋白血症を認めた。入院後、蛋白漏出シンチグラフィを施行し、上部小腸からの漏出が疑われ、蛋白漏出性胃腸症と診断した。カプセル内視鏡を施行したところ、上部小腸で出血を疑わせる所見を認めていた。更なる小腸評価及び出血精査目的にダブルバルーン小腸内視鏡を施行したところ、十二指腸乳頭部近傍に出血点を認め、出血点に潰瘍などの病変は指摘できずangiodysplasiaなどが考えられた。同部位に対してクリッピングにて止血術を施行した。止血後、黒色便は消失し、低蛋白血症および貧血の改善とともに血清蛋白の上昇を認めたため、十二指腸出血に伴う低蛋白血症であったものと診断した。 【考察】本症例では蛋白漏出シンチグラフィにて消化管からの蛋白漏出が疑われ、消化管出血をコントロールすることにより低蛋白血症の改善を認めた。蛋白漏出性胃腸症を疑った場合には、とくに抗凝固剤内服中などの出血のリスク症例に対し、消化管出血も念頭においた消化管の精査が必要であると思われた。
索引用語 蛋白漏出, 消化管出血