セッション情報 一般演題

タイトル 104:

血清学的に自己免疫性肝炎が疑われたが、組織学的所見と経過から診断したAMA陰性原発性胆汁性肝硬変の一例

演者 滝澤 直歩(福岡徳洲会病院 内科)
共同演者 福田 容久(福岡徳洲会病院 消化器内科), 児玉 亘弘(福岡徳洲会病院 内科), 松本 修一(福岡徳洲会病院 肝臓内科)
抄録 症例は52歳女性。特記すべき既往歴なし。自覚症状はないが、職場健診で肝機能障害を指摘され、当院受診した。身体所見上、貧血、応安なく、腹部は平坦、軟であり肝・脾は触知しなかった。採血上、AST 52IU/L、ALT 83IU/L、ALP 1328IU/L、γ-GTP 373IU/Lと胆道系優位の肝胆道系酵素上昇を認め、HBs抗原、HCV抗体は陰性であった。抗核抗体1280倍(HOMOGENEOUS 1280倍)、抗ミトコンドリアM2抗体陰性、IgG 3958mg/dl、IgM 116mg/dlであり、組織所見なしでSimplified Diagnostic Criteria for Autoimmune Hepatitis(Hepatology 2008; 48: 169-176)で6点とProbable AIHであった。組織学的診断のため肝生検を施行したところ、AIHに特徴的なintarface hepatitisは軽度で、ロゼット形成は認めず、胆管周囲に高度のリンパ球浸潤、また若干の形質細胞浸潤を認める慢性非化膿性破壊性胆管炎(chronic non-suppurative destructive cholangitis:CNSDC)を認め、原発性胆汁性肝硬変を疑う所見であった。PBCとして組織学的病期分類ではA.線維化1点、B.胆管消失1点の計2点、Stage 2(mild progression)であった。胆道系優位の肝胆道系酵素上昇があり、抗ミトコンドリア抗体陰性、抗核抗体抗力価を併せて、PBCの亜型である自己免疫性胆管炎またはPBC-AIHオーバーラップ症候群であると考えた。ウルソデオキシコール酸内服を開始したところ2か月後にはAST 30IU/L、ALT 24IU/L、ALP 632IU/L、γ-GTP 132IU/Lと肝胆道系酵素はすべて改善傾向であった。本症例は、組織所見以外は自己免疫性肝炎を支持する所見が多かったが、肝生検を行うことで原発性胆汁性肝硬変の診断となり、適切な治療を行うことができため、組織診断は有用であると考える。
索引用語 自己免疫性肝炎, 原発性胆汁性肝硬変