抄録 |
【背景・目的】生活習慣病の病態に肝は密接に関与する。生活習慣病を肝疾患の視点から囲い込むためには、生活習慣を背景としたNAFLDやアルコール性肝障害を考慮したALT正常値・目標値の理解が不可欠である。【対象・方法】多施設共同研究。HBs-Ag陰性、HCV-Ab陰性の健診受診11404名(年齢18-87歳,平均49.9歳,男性/女性; 6894/4510名)を対象とし、重回帰分析でALTに関与する生活習慣関連因子を抽出し、そのすべての因子が基準値内にある群を健常群と設定しALTの平均値および90% タイル値を求めた。【結果】ALT値に関連する因子は性別(β=4.4)、年齢(β=-0.11)、BMI(β=0.58)、ウエスト周囲径(β=0.11)空腹時血糖 (FPG)(β=0.06)、総コレステロール(T-Cho)(β=0.02)、中性脂肪(TG)(β=0.03,)、腹部超音波での脂肪肝有無(β=7.0)であった(いずれも P<0.01)。血圧、HDLコレステロール、アルコール摂取は有意な因子ではなかった。このうち生活習慣に関連する因子がすべて基準値内(BMI<25, ウエスト周囲径<85 cm(男性)または<90 cm(女性), FPG<110 mg/dl, T-Cho<220 mg/dl, TG<150 mg/dl, 脂肪肝無)である健常群のALT値(mean±SDおよび90% タイル値)は男性(1654例)19.6±10.3 IU/l、30 IU/l、女性(2105例)15.1±7.6 IU/l、23 IU/lであり、非健常群と比しALTは有意に低値であった(非健常群男性 29.3±21.3 IU/l, P<0.01;女性19.8±13.6 IU/l, P<0.01)。健常群を年齢で層別化し90%タイル値を求めると18-40歳(男性29 IU/l;女性20 IU/l)、41-60歳(男性29 IU/l;女性25 IU/l)、61歳以上(男性37 IU/l;女性34 IU/l)であった。【結語】生活習慣病を背景とする肝疾患診療においては症例に応じた正常ALT値を目標とし管理することが肝要である。 |