セッション情報 専修医発表(卒後3-5年迄)

タイトル 専73:

中心静脈栄養で腸閉塞に至った非特異性多発性小腸潰瘍症の一例

演者 近藤 雅浩(九州大学病態機能内科学)
共同演者 江崎 幹宏(九州大学病態機能内科学), 久保倉 尚哉(九州大学病態機能内科学), 浅野 光一(九州大学病態機能内科学), 熊谷 好晃(九州大学形態機能病理学), 平橋 美奈子(九州大学形態機能病理学), 植木 隆(九州大学臨床腫瘍外科), 松本 主之(九州大学病態機能内科学), 北園 孝成(九州大学病態機能内科学)
抄録 【症例】36歳、女性。【主訴】腹痛。【家族歴】両親が従兄弟婚、姉に非特異性多発性小腸潰瘍症あり。【現病歴】8才時より貧血と低蛋白血症を指摘されていた。2009年8月、低アルブミン血症の増悪を認め当院総合診療科に入院し、小腸X線検査と経肛門的ダブルバルーン小腸内視鏡検査(DBE)で中部~下部回腸に管腔狭小化を伴う開放性潰瘍が多発していた。以上の臨床経過から非特異性多発性小腸潰瘍症と診断された。以後、当科外来で経腸栄養療法を中心とした治療を行っていたが、2012年1月に低アルブミン血症が増悪し、同年4月下旬には食後の腹痛が出現したため、精査加療目的に当科入院となった。入院時、腹部に異常なかったが、下肢に浮腫がみられた。血液検査にて軽度の貧血、および総蛋白 4.0g/dl、アルブミン 1.6 g/dlと低蛋白血症を認め、CRP 1.88 mg/dL、血沈 9mm/hrと軽度の炎症所見を伴っていた。インターフェロン-γ遊離試験、ツベルクリン反応は陰性であった。小腸X線造影検査では回腸に多発する非対称性の変形と多発狭窄を認めた。入院後、中心静脈栄養(TPN)を行い低アルブミン血症は改善傾向にあったが、TPN開始1か月後に行った経肛門的DBEでは、X線検査で下部回腸に指摘された最肛門側の病変が偽憩室を伴う狭小化として観察され、狭窄部にヒトデ状の浅い開放性潰瘍を伴っていた。TPN開始2か月後に経腸栄養薬を開始したところ、腹痛と嘔吐が出現し、腹部CTにて拡張した腸管と鏡面像を認め腸閉塞と診断した。経口摂取を中止し症状は一旦改善したが、その後も腸閉塞症状を繰り返した。病変が多発すること、内視鏡操作が容易でないことから、DBEによる拡張術を断念し、手術を行う方針となった。非特異性多発性小腸潰瘍症は組織学的に非特異的な浅い小腸潰瘍が多発する慢性炎症性腸疾患であり、栄養療法のみ奏効するとされる。本例は36歳に至るまで手術を回避できていたが、TPNにより比較的短期間に高度の狭窄に至ったと考えられた。
索引用語 小腸, 潰瘍