セッション情報 一般演題

タイトル 010:

亜全胃温存膵頭十二指腸切除術後33日目に吐血で発症した胃十二指腸動脈断端の仮性動脈瘤破裂の1例

演者 中島 亮(福岡大学医学部 消化器外科)
共同演者 佐々木 隆光(福岡大学医学部 消化器外科), 加藤 大祐(福岡大学医学部 消化器外科), 塩飽 洋生(福岡大学医学部 消化器外科), 山下 裕一(福岡大学医学部 消化器外科)
抄録 症例:61歳、男性。黄疸を認め、近医受診したところ閉塞性黄疸と診断され当科紹介となった。入院の上精査を行い、非露出型十二指腸乳頭部癌による胆管閉塞と診断し内視鏡的胆道ドレナージ術を施行した。減黄は順調に進み第19病日目に亜全胃温存膵頭十二指腸切除術(SSPPD)及びリンパ節郭清術(D2+α)を施行した。術中所見では、腫瘍による閉塞性膵炎が著しく、膵周囲への炎症波及が著明であった。剥離操作に難渋したが、胃十二指腸動脈は根部を1mm残して、二重結紮切離し、定型通りに手術は行えた。術後6日目までにドレーンは全抜去し膵液瘻の発生はなかったが、術後11日目より胃停滞症状が出現した。術後28日目に胃停滞症状改善したため食事再開した。術後33日目昼食後に突然吐血しショックとなり、上部消化管出血疑いで緊急内視鏡検査を施行した。胃内に著明な凝血槐を認め、吸引洗浄し観察した。吻合部の一部から湧出性出血を認め出血源と判断しクリップにて止血した。その後バイタルサインは安定したため経過観察していたが、夕方再度吐血しショックとなった。再度上部消化管内視鏡検査を行ったところ、挙上空腸より突然多量の噴出性出血を認め、内視鏡的止血困難と判断しIVRへと移行した。血管造影で胃十二指腸動脈断端に仮性動脈瘤を認め、同病変より挙上空腸への造影剤の漏出を認めた。以上より胃十二指腸動脈断端の仮性動脈瘤が破裂し挙上空腸へ穿破したと診断し、血管内塞栓術(TAE)を施行し止血した。TAE後は一過性に肝胆道系酵素は上昇し、肝外側区域は肝壊死に陥ったが、全身状態は安定していった。結語:今回我々は、SSPPD術後に仮性動脈瘤破裂が消化管穿破しTAEにて救命し得た1例を経験した。PD術後の消化管出血の原因として吻合部潰瘍だけでなく、稀ではあるが本疾患も念頭に置いて診療にあたるべきである。
索引用語 消化管出血, 膵頭十二指腸切除術