抄録 |
【症例】69歳, 男性. 【主訴】下血. 【現病歴】高血圧症, 多血症のため近医通院中であり, バイアスピリンを内服中であった. 2012年6月28日, 黒色便に気付いたが様子を見ていた. 6月30日朝, 大量の新鮮血を下血し当院救急外来を受診した.【来院時所見】意識清明, 血圧73/53mmHg, 脈拍103回/分, 腹部特記所見なし, Hb 7.9 g/dl. 【経過】下部消化管内視鏡検査(CS)では, 全大腸に凝血塊を認め, 回腸末端からは新鮮血の流出を認めた. 上行結腸, 盲腸には憩室を多数認め, 回腸末端には小びらんが散見されたが出血点は同定できなかった. 一旦CSを終了し, 腹部造影CT検査を施行した. 回盲部付近で造影剤の血管外漏出を認めたため, 再度CSを施行した. 回腸末端から口側約10 cmで小腸憩室からの出血を認め, 出血源と判断し, クリップによる内視鏡的止血術を行った. 止血できたことを確認し, 処置を終了した. 処置中にRCC4単位を輸血し, 追加で翌日から2日間でRCC4単位を輸血した. 再出血なく経過し, 入院3日目にはHb 9.2 g/dlまで改善した. 入院後8日目から食事を開始したが, その後も貧血の進行はなく, 明らかな出血も見られなかった. 入院12日目, Meckel憩室シンチグラフィー(99mTc pertechnetateシンチグラフィー)を施行したが, 有意な所見は認められなかった. また, 翌日には内視鏡下の小腸造影検査を行ない, 回腸末端及び上行結腸に大小さまざまな憩室があることを確認した. 入院14日目, 全身状態良好で自宅退院となった.【考察】小腸憩室出血の内視鏡的止血術の報告は少ない. 今回, 造影CTにて出血点を同定し内視鏡的に止血し得た小腸憩室出血の1例を経験したため, 多少の文献的考察を加えて報告する. |