セッション情報 シンポジウム「消化器疾患における新規治療法」

タイトル S2-05:

当科における肝細胞癌に対する定位放射線治療の経験

演者 大重 彰彦(鹿児島大学病院消化器内科)
共同演者 玉井 努(鹿児島大学病院消化器内科), 平木 嘉幸(鹿児島大学病院放射線科), 大野 香織(鹿児島大学病院消化器内科), 豊倉 恵理子(鹿児島大学病院消化器内科), 今中 大(鹿児島大学病院消化器内科), 熊谷 公太郎(鹿児島大学病院消化器内科), 森内 昭博(鹿児島大学病院消化器内科), 宇都 浩文(鹿児島大学病院消化器内科), 桶谷 眞(鹿児島大学病院消化器内科), 井戸 章雄(鹿児島大学病院消化器内科), 坪内 博仁(鹿児島大学病院消化器内科)
抄録 【目的】2004年に肝細胞癌(HCC)に対する定位放射線治療(SRT)が保険収載され、近年その有効性が報告されつつある。今回、経皮的局所治療が困難であったHCCに対しSRTを施行し、その安全性・有効性について検討した。【対象・方法】対象は、HCCに対して肝動脈化学塞栓術(TACE)を施行後に、根治を目的としたSRTを施行した6例6結節。患者背景は、男性/女性:3/3、年齢中央値は75.5 (53-85) 歳、HBV/HCV:1/5、Child-Pugh分類A/B:4/2であった。腫瘍は、サイズ中央値16 (10-31) mm、Stage1/2/3/4:2/3/0/1、初発/再発:1/5で、SRT前のTACEは平均1.8回であった。総照射線量は、中央値56.0 (42.0-57.6) Gy、平均照射回数は6.5回であった。方法は、安全性を血液生化学検査およびCTCAE ver. 4.0で、また有効性を腹部造影CT検査で評価した。【結果】観察期間の中央値は116(25-186)日。有害事象(AE)について,治療中のAEは、臨床検査値において,Grade(G)3の貧血1例,血小板減少1例であった。また,治療後1ヶ月以内のAEは、上記に加えG3の白血球減少2例であった.また,肝胆道系障害として,治療中に見られたAEはなく、治療後1ヶ月以内のAEは、G3の門脈血栓症1例で,ワーファリンによる抗血栓療法を行った。また,胃腸障害として,G2の胃十二指腸潰瘍を1例で認め,PPIを開始した.1ヶ月目から3ヶ月目までに新たに出現したAEはなかった.有効性については、RECIST,mRECIST,RECICLによって評価した.治療終了後1ヶ月までに評価できた5例では,すべての評価法でCR/PR/SD/PD=2/0/1/2,奏効率40%,病勢制御率60%であった.また,3ヶ月目まで評価できた3例では,RECIST:CR/PR/SD/PD=1/2/0/0,mRECIST:CR/PR/SD/PD=3/0/0/0,RECICL:CR/PR/SD/PD=3/0/0/0であり,いずれも奏効率,病勢制御率とも100%であった. 【結論】SRTは、経皮的局所治療困難例においても局所制御が期待できる治療法である。しかし、治療効果判定が長期にわたる点、予想しない合併症がおこる可能性がある点などから、安全性、有効性、および症例の選択について、今後更なる検討が必要である。
索引用語 肝細胞癌, 定位放射線治療