セッション情報 研修医発表(卒後2年迄)

タイトル 研60:

保存的治療により改善した腹腔内遊離ガス・門脈ガス血症を伴った腸管気腫症の1例

演者 濱田 隆志(国立病院機構長崎医療センター 外科)
共同演者 永田 康浩(国立病院機構長崎医療センター 外科), 平山 昂仙(国立病院機構長崎医療センター 外科), 土肥 良一郎(国立病院機構長崎医療センター 呼吸器外科), 野中 隆(国立病院機構長崎医療センター 外科), 徳永 隆幸(国立病院機構長崎医療センター 外科), 北島 知夫(国立病院機構長崎医療センター 外科), 遠山 啓亮(国立病院機構長崎医療センター 外科), 原口 正史(国立病院機構長崎医療センター 外科), 蒲原 行雄(国立病院機構長崎医療センター 外科), 前田 茂人(国立病院機構長崎医療センター 外科), 田川 努(国立病院機構長崎医療センター 呼吸器外科), 藤岡 ひかる(国立病院機構長崎医療センター 外科)
抄録 【はじめに】腸管気腫症(pneumatosis intestinalis;以下PI)は腸管壁内に貯留する多数の含気性小嚢胞を特徴とするまれな疾患である。また、門脈ガス血症(portal venous gas;以下PVG)は腸管壊死などに伴って発症することが多く、予後不良の徴候とされている。今回、門脈ガス血症および腹腔内遊離ガスを伴う腸管気腫症を経験したので、文献的考察を含めて報告する。【症例】80歳代、男性。主訴は心窩部痛。夜間に心窩部痛が出現し近医を受診し、当院へ救急搬送された。上腹部に圧痛を認めるも腹膜刺激症状なし。腹部単純X線で腹腔内遊離ガスを認め、腹部CTでは肝前面に多量の腹腔内遊離ガスが存在し、さらに腸管壁内気腫、門脈内ガスが確認された。発熱なく、血液検査で軽度の炎症所見を認めるも全身状態は安定したため保存的治療を行った。消化管減圧と高濃度酸素投与を行い、翌日には症状は軽減、門脈ガスも消失した。4日目には腸管気腫、遊離ガスも減少したので経口摂取を再開、以後は症状の再燃・増悪なく18病日に自宅退院となった。【考察とまとめ】PVGの発生機序として腸管粘膜の損傷、腸管内圧の上昇、ガス産生菌の門脈内移行などがある。その原因として、上腸間膜動脈閉塞症・絞扼性イレウス・壊死性腸炎等による腸管虚血や腸管壊死の存在が挙げられ外科的治療が必要となることが多い。一方、臨床症状が軽微で腸管壊死が除外された場合は保存的に経過観察することが可能な症例も存在する。本例のようにPIとPVGに腹腔内遊離ガスを伴った症例は稀であるが、重篤な症例も報告されており、治療法は慎重に選択する必要がある。
索引用語 腸管気腫症, 門脈ガス血症