セッション情報 一般演題

タイトル 036:

診断に苦慮し、複数臓器に病変を形成したIgG4関連疾患の一例

演者 前田 仁美(鹿児島大学 消化器疾患・生活習慣病学)
共同演者 田中 啓仁(鹿児島大学 消化器疾患・生活習慣病学), 坪内 直子(鹿児島大学 消化器疾患・生活習慣病学), 豊倉 恵理子(鹿児島大学 消化器疾患・生活習慣病学), 那須 雄一郎(鹿児島大学 消化器疾患・生活習慣病学), 沼田 政嗣(鹿児島大学 消化器疾患・生活習慣病学), 船川 慶太(鹿児島大学 消化器疾患・生活習慣病学), 藤田 浩(鹿児島大学 消化器疾患・生活習慣病学), 井戸 章雄(鹿児島大学 消化器疾患・生活習慣病学), 坪内 博仁(鹿児島大学 消化器疾患・生活習慣病学)
抄録 【症例】77歳、男性。2000年に2型糖尿病と診断され、2006年より内服加療されていた。同年2月頃より疼痛を伴う左耳下腺及び両側顎下腺リンパ節腫脹が出現し、当院耳鼻咽喉科で精査され、リンパ節炎と診断された。2010年1月より再度頸部リンパ節腫張が出現し、可溶性IL-2レセプター 1045 U/mlと高値より、悪性リンパ腫が疑われたが、リンパ節細胞診にてfollicular hyperplasiaと診断され、経過観察された。同年6月からIgG 2000 mg/dl前後と高値で推移したため、IgG4関連疾患が疑われ、リンパ節生検時の組織を再検されたところ、IgG4陽性細胞を多数認めた。また、2012年2月の腹部造影CT検査で、膵頭部、膵尾部に約30mm大、40mm大の低吸収域を指摘され、4月に精査目的に当科紹介となった。同部位に対し超音波内視鏡下穿刺吸引術(EUS-FNA)を施行した。膵組織中にはリンパ球、形質細胞が混在し、免疫染色でIgG4陽性細胞を10個/HPF以上認めた。血清IgG4と987mg/dlと上昇し、膵限局性腫大、かつ病理所見を満たすことから、自己免疫性膵炎と診断した。また、PET-CT検査で、膵腫瘤に一致する集積と、耳下腺、顎下腺病変、肺門部リンパ節、肺底部、腹部大動脈など多数の集積を認めた。以上の所見よりIgG4関連の包括診断基準(2011)の確診群と考えられた。診断確定後、PSL 0.6mg/Kg/日を開始し、2週間後に膵の腫瘤性病変の著明な縮小と血清IgG4の低下、糖尿病の改善を認め、治療継続中である。【考察】IgG4関連疾患は、高IgG4血症と罹患臓器への著明なIgG4陽性形質細胞浸潤を特徴とする全身性、慢性炎症性疾患であり、病変の時間的・空間的多発性を特徴とする。本症例は、この疾患概念が広く認知される前に発症し、治療介入まで6年以上経過した。このため、全身の複数にわたる臓器にIgG4関連の多彩な疾患及び病態を認めたと考えられた興味深い症例であり、文献的考察を加えて報告する。
索引用語 IgG4関連疾患, 自己免疫性膵炎