セッション情報 一般演題

タイトル 083:

保存的に救命しえたプロテインS欠損症による上腸間膜静脈・門脈血栓症の1例

演者 河野 克俊(大牟田市立病院消化器内科)
共同演者 田宮 芳孝(大牟田市立病院消化器内科), 豊増 靖(大牟田市立病院消化器内科), 森田 拓(大牟田市立病院消化器内科), 安本 紗代(大牟田市立病院消化器内科), 大内 彬弘(大牟田市立病院消化器内科), 垣内 誠也(大牟田市立病院消化器内科), 山内 亨介(大牟田市立病院消化器内科), 坂田 研二(大牟田市立病院消化器内科), 野口 和典(大牟田市立病院消化器内科), 佐田 通夫(久留米大学病院内科学講座消化器内科部門)
抄録 上腸間膜静脈・門脈血栓症は比較的稀であるが、腸管壊死等により致命的となりうる重篤な疾患である。そのため、殆どの症例で腸管切除や血栓除去などの緊急手術が必要とされる。今回、我々は保存的に救命しえたプロテインS(以下PS)欠損症による上腸間膜静脈・門脈血栓症を経験したので報告する。
【症例】49歳男性。2012年5月中旬から持続する心窩部痛を主訴に、6月当院受診。腹部造影CT検査にて上腸間膜静脈から門脈本幹・左右枝にかけて血栓像を認め、小腸壁は浮腫状に肥厚していた。肝門部では側副路が発達していた。腹膜刺激症状などの理学的所見は乏しく、血液生化学検査では軽度の炎症反応上昇のみであったため、保存的にヘパリンによる抗凝固療法を開始した。鑑別として、先天性血液凝固異常症を疑い測定したPS活性値が22%と低値であったことから、PS欠損症が血栓症の原因であると判断した。第20病日の腹部造影CT検査にて門脈血栓は消失した。上腸間膜静脈血栓は一部残存しているが、ワルファルンによる抗凝固療法に置換後、現在は症状なく経過している。
【考察】PSはビタミンK依存性の血清蛋白で、活性化プロテインCの補体として働き、血液凝固を阻害する。常染色体優性遺伝形式をとり、日本人の遺伝子保有率は約1%である。PS欠損症の約50%が血栓症を発症するといわれているが、上腸間膜静脈や門脈血栓症は非常に稀である。従来、特発性とされてきた上腸間膜静脈・門脈血症の中にPS欠損症の症例が含まれている可能性があるため、血栓症の診断に当たってはPS欠損症を念頭に置くことが必要と考えられる。
索引用語 プロテインS欠損症, 門脈血栓