セッション情報 研修医発表(卒後2年迄)

タイトル 研47:

膵癌に伴うTrousseau症候群に対しヘパリンカルシウム自己皮下注射が有用であった一例

演者 安藤 伸尚(九州大学病態制御内科学)
共同演者 高岡 雄大(九州大学病態制御内科学), 大野 隆真(九州大学病態制御内科学), 植田 圭二郎(九州大学病態制御内科学), 五十嵐 久人(九州大学病態制御内科学), 麻生 暁(九州大学病態制御内科学), 小副川 敬(九州大学病態制御内科学), 北本 史朗(九州大学循環器内科), 竹本 真生(九州大学循環器内科), 西坂 麻里(九州大学循環器内科), 中村 太一(九州大学病態制御内科学), 新名 雄介(九州大学病態制御内科学), 肱岡 真之(九州大学病態制御内科学), 内田 匡彦(九州大学病態制御内科学), 李 倫學(九州大学病態制御内科学), 中村 和彦(九州大学病態制御内科学), 伊藤 鉄英(九州大学病態制御内科学), 高柳 涼一(九州大学病態制御内科学)
抄録 膵癌を始めとする悪性腫瘍では、血栓塞栓症などの凝固異常を合併(Trousseau症候群)する頻度が高く、腫瘍由来の凝固能亢進状態に加え、化学療法などでも危険率が高まり、治療に難渋する例も多い。今回、深部静脈血栓症(VTE)・播種性血管内血液凝固症候群(DIC)を伴う膵癌にヘパリンカルシウム(heparin)自己皮下注射が有用であった1例を経験した。症例は66歳男性。2012年3月、改善しない右下肢浮腫と疼痛を主訴に近医を受診。下肢VTEと診断、ワルファリンカリウム(warfarin)が開始された。血栓塞栓精査の胸腹部CTで、肺動脈血栓及び、膵尾部腫瘤、多発肝腫瘤を認め、当院紹介。膵尾部腫瘤に対する超音波内視鏡下穿刺にてadenocarcinomaの組織診で、VTEを伴う膵尾部癌(stage IVb)と診断し、全身化学療法(gemcitabine)を開始。Warfarin下での治療開始後、右上肢と左下肢の疼痛、腫脹と共に、血小板減少、FDP、D-dimerの上昇も認めたため、VTEやDICはwarfarinでコントロール困難と判断。heparin持続静注に変更し、症状及び血液所見も改善した。在宅に向け、Heparin持続静注から皮下注射(平成24年1月保険適応)導入後も同様であったため、退院。その後も連日在宅皮下注射を継続しながら、外来化学療法を施行している。平成24年8月現在FDP、D-dimerは正常化、画像評価では下肢血栓は残存するも、肺動脈血栓は消失した。一方、膵癌に関しては、CTにて腫瘍はSDながら、縮小傾向で、ヘパリン併用による化学療法の上乗せ効果も期待された。DIC、血栓塞栓症により外来化学療法困難な膵癌に対し、heparin在宅皮下注射を導入することで、凝固異常の改善、化学療法を継続でき、既報のランダム化試験で示されたヘパリンによる生存率向上も期待される症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。
索引用語 Trousseau症候群, ヘパリン自己皮下注射