セッション情報 一般演題

タイトル 092:

神経内分泌腫瘍の一例

演者 垣内 誠也(大牟田市立病院内科)
共同演者 田宮 芳孝(大牟田市立病院内科), 豊増 靖(大牟田市立病院内科), 森田 拓(大牟田市立病院内科), 安本 紗代(大牟田市立病院内科), 大内 彬弘(大牟田市立病院内科), 河野 克俊(大牟田市立病院内科), 山内 亨介(大牟田市立病院内科), 衛藤 大明(大牟田市立病院外科), 島松 一秀(大牟田市立病院病理診断科), 坂田 研二(大牟田市立病院内科), 野口 和典(大牟田市立病院内科), 佐田 通夫(久留米大学医学部内科学講座消化器内科部門)
抄録 【症例】64歳女性。10年来、近医で糖尿病・高脂血症を加療中であった。2011年9月に肝機能障害と腹部エコーで肝内全域に広がる腫瘍性病変を認め、精査加療目的で当院を紹介受診した。特記すべき身体所見はなし。血液生化学検査で肝胆道系酵素の上昇を認めた。HBs-Ag(-)、HCV-Ab(-)、腫瘍マーカーは正常範囲で、臨床的に背景肝は正常であった。腹部造影CTにて肝全域を占拠する辺縁分葉状の腫瘍を認めた。比較的境界明瞭で内部に壊死組織による低吸収域を伴ない、腫瘍は淡い造影効果を示した。胸腹部CT、上部下部消化管内視鏡検査、FDG PET-CTで原発巣を疑う悪性所見を認めなかった。以上より肝原発の悪性腫瘍を考え、組織診断のために小開腹下肝腫瘍生検を施行した。病理組織の所見は、類円形や短紡錘形の核と好酸性胞体を有する腫瘍細胞が束状・錯状に浸潤増殖し、免疫染色でAE1/AE3(+)、EMA(+、focul)、vimentin(-)、LCA(-)、S-100(-)、SMA(-)、CD34(-)、c-kit(-)、synaptophysin(+)、chromogranin(+)、CD56(+)、NSE(+)であった。神経内分泌マーカーに陽性であることから神経内分泌腫瘍(NET)と診断した。2010年WHO分類ではNETを、1.高分化型神経内分泌腫瘍、2.高分化型神経内分泌癌、3.低分化型神経内分泌癌 の3つに分類しているが、本症例はMIB-1指数 8%であり、2.に相当すると考えた。腫瘍が肝臓の大部分を占め切除不能であったため、ソマトスタチンアナログ(サンドスタチン)投与を開始した。【考察】NETは、神経内分泌細胞由来の腫瘍で消化管・肺など種々の臓器に発生するが、肝原発のものは稀である。治療の第一選択は外科的切除術であり、切除した場合の5年生存率は78%と報告されている。切除不能例はRFA、TAE、化学放射線療法が検討される。化学療法としては、ソマトスタチンアナログ(サンドスタチン)が国内では保険適応であり、症状の緩和と腫瘍増殖抑制による延命が期待される。今回我々は肝原発神経内分泌腫瘍を経験した。貴重な症例と考え若干の文献的報告を加えて報告する。
索引用語 神経内分泌腫瘍, ソマトスタチンアナログ