セッション情報 一般演題

タイトル 096:

特発性大臀筋内血腫を合併したアルコール性肝硬変の一例

演者 最勝寺 晶子(済生会川内病院内科)
共同演者 呉 建(済生会川内病院内科), 井上 和彦(済生会川内病院内科), 矢野 弘樹(済生会川内病院内科), 鉾之原 基(済生会川内病院内科), 前田 拓郎(済生会川内病院内科), 青崎 眞一郎(済生会川内病院内科), 馬渡 誠一(鹿児島大学大学院消化器疾患・生活習慣病学), 森内 昭博(鹿児島大学大学院消化器疾患・生活習慣病学), 井戸 章雄(鹿児島大学大学院消化器疾患・生活習慣病学), 坪内 博仁(鹿児島大学大学院消化器疾患・生活習慣病学)
抄録 【はじめに】肝硬変患者では凝固能低下や血小板減少から出血傾向を認めることがあるが、肝予備能が低下した症例に多いとされている。今回、肝予備能が比較的良好であったにもかかわらず、ワーファリンによる軽度の凝固能低下を誘因に、筋肉内血腫を来した症例を経験したので報告する。【症例】75歳、男性。代償性アルコール性肝硬変(Child-pugh 6点,grade A)で通院中、定期CTで上腸管膜静脈-空腸静脈内に血栓を認め、3か月前にワーファリンを開始し、PT-INR 1.5-2程度にコントロールされていた。今回、右臀部大腿部の疼痛と体動時のふらつきを主訴に当科を受診した。打撲の病歴はなかったが、右臀部から右下肢の腫脹、皮下血腫を認め入院した。貧血(Hb 6.5 g/dL)、炎症反応の上昇(CRP 4.12 mg/dL)、PT-INRの延長(PT-INR 3.02)および造影CTで右大臀筋内血腫、右臀部大腿下腿の皮下血腫を認めた。活動性の動脈性出血は否定的で、血腫内に明らかな血管性病変も認めなかったため、経カテーテル的塞栓術の適応はないと考えられた。Vital signは保たれており、ワーファリンを中止し、輸血、輸液、抗生物質投与により保存的に加療した。徐々に血腫は吸収され、全身状態改善し退院となった。【考察】肝疾患患者に稀に筋肉内血腫を合併することが報告されており、その大部分はアルコール性で、出血の機序として肝硬変による出血性素因に加え、アルコールによる血管壁の脆弱化が関与することが挙げられている。本症例においては、肝予備能は比較的良好であったが、ワーファリン内服に加え、飲酒を継続していたことが、血腫を形成した要因の可能性が考えられた。保存的加療で血腫は吸収され全身状態も改善したが、肝硬変患者に抗凝固剤を投与する際には慎重な経過観察が必要と考えられ、文献的考察を加えて報告する。
索引用語 肝硬変, 筋肉内血腫