セッション情報 専修医発表(卒後3-5年迄)

タイトル 専75:

感染性腸炎との鑑別に苦慮したHenoch-Schönlein 紫斑病の一例

演者 井上 和彦(済生会川内病院)
共同演者 前田 拓郎(済生会川内病院), 矢野 弘樹(済生会川内病院), 鉾之原 基(済生会川内病院), 最勝寺 晶子(済生会川内病院), 呉 健(済生会川内病院), 青崎 眞一郎(済生会川内病院), 坪内 博仁(鹿児島大学大学院 消化器疾患・生活習慣病学)
抄録 症例は19歳男性。2012年5月19日より腹痛、嘔吐出現。5月21日症状の増悪を認め、救急搬送されたが、軽度の炎症所見を認めるのみで感染性腸炎疑いにて抗菌薬処方され経過観察。5月22日より黒色便を認め、5月25日近医受診。WBC 23000 /μl, CRP 12.0 mg/dlと炎症反応の上昇を認め、CTにて回盲部壁肥厚を認め、同院入院。その後、症状の改善乏しく、5月28日当院紹介入院。当院CTでは小腸のびまん性浮腫状壁肥厚、腸間膜リンパ節腫大、腹水、胸水を認めた。5月29日、下部消化管内視鏡検査では回腸に限局性の潰瘍性病変を認めた。患者の食物摂取歴には鶏肉、卵の摂取があり、カンピロバクター、サルモネラ等の感染性腸炎の可能性が考えられたが、入院時に両下肢に散在性の紫斑を認めていたため、紫斑病も鑑別にあげ、皮膚生検を施行した。本症例では患者の腹痛が激痛であり、生検結果の前にPSL120mg/day投与した。その後は徐々に症状改善を認め、PSLを漸減、生検結果でも紫斑病に矛盾しない所見であった。Henoch-Schönlein 紫斑病は、アレルギー機序による全身の細小血管炎で、皮膚症状、関節症状、腹部症状を三主徴とするが、10~20%の症例で腹部症状が皮膚症状に先行するため、診断に苦慮することがある。現病歴、検査所見、身体所見を総合的に判断することが重要である。患者は現在、腹部症状の再燃は認めないが、腎症の出現を認めたため、腎臓内科にて慎重な経過観察を行っている。感染性腸炎との鑑別に苦慮したHenoch-Schönlein 紫斑病の一例を経験したので報告する。
索引用語 Henoch-Schönlein 紫斑病, 感染性腸炎