セッション情報 一般演題

タイトル 094:

SLE,慢性腎不全に合併した多発性肝嚢胞症切除の1例

演者 三原 勇太郎(久留米大学外科)
共同演者 堀内 彦之(久留米大学外科), 木下 壽文(久留米大学外科), 白水 和雄(久留米大学外科)
抄録 多発性肝嚢胞症が治療の対象となるのは嚢胞の増大に伴う腹部腫瘤,腹部膨満感,腹痛や腹部不快感などの症状が出現し,QOLが損なわれる場合である.今回,SLE(全身性エリテマトーデス),慢性腎不全に合併した多発性肝嚢胞症の切除例を経験した. 症例は,50歳台女性で,平成2年頃に多発性肝嚢胞症と診断された.嚢胞腎はなかった.平成11年にSLEと診断され,腎機能障害も伴い加療されていた.平成23年4月後腹部膨満感が出現し,症状は悪化し多量の腹水貯留を認めた.腹膜刺激症状は認められなかった.腹部膨満感の増悪は,嚢胞の自然穿破による腹水貯留と嚢胞の増大によるものと判断し,同年6月腹腔鏡下肝嚢胞開窓術を施行した.術後多量の腹水排液,一時的な低蛋白血症と腎機能低下を認めたが,腹腔内ドレーンは術後4日目に抜去でき,順調な経過で退院できた.しかし,退院1ヶ月後に再度,腹水貯留による腹部膨満感が出現した.腹水や低蛋白血症に対し蛋白補給,利尿剤投与や腹水穿刺を行うが,症状の改善は乏しかった.低蛋白血症,腹水貯留や腹部膨満の原因は,腎障害によるもの,下大静脈圧排によるものや門脈圧亢進に伴うものなどが考えられたが,同定はできなかった.多発性肝嚢胞症の根本的な治療法は確立されていないが,本症例は,症状を有し,肝両葉特に右葉に多数の肝嚢胞が存在し,肝左葉の肝実質の容積は十分量あり,Schnelldorferらの分類のtype Cに相当した.彼らがtype Cの治療で推奨する肝右葉切除術+嚢胞開窓術を平成24年8月に行った.術中測定した門脈圧は正常範囲であった.嚢胞腎はなかった.最大腹水排液量は,術後4日目に約6,000ml/日を越えたが,その後は徐々に減少し,術後10日目には腹腔内ドレーンは抜去できた.術後,腹水排液が大量で体重は10kg減少し,循環動態が不良な時期があったが,腎機能は悪化することなく,合併症もなく経過し退院した.多発肝嚢胞症の文献的な考察を行い,本症例を報告する.
索引用語 肝嚢胞, 切除術