セッション情報 | ワークショップ「消化器疾患と生活習慣(病)」 |
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タイトル | W1-08:肥満症管理における肝消化器病専門医の位置付け |
演者 | 西村 順子(大分大学医学部付属病院総合内科学第1) |
共同演者 | 遠藤 美月(大分大学医学部付属病院総合内科学第1), 吉原 光江(大分大学医学部付属病院総合内科学第1), 岩尾 正雄(大分大学医学部付属病院総合内科学第1), 正 宏樹(大分大学医学部付属病院総合内科学第1), 所 征範(大分大学医学部付属病院総合内科学第1), 織部 淳哉(大分大学医学部付属病院総合内科学第1), 千葉 政一(大分大学医学部付属病院総合内科学第1), 正木 孝幸(大分大学医学部付属病院総合内科学第1), 本田 浩一(大分大学医学部付属病院総合内科学第1), 加隈 哲也(大分大学医学部付属病院総合内科学第1), 清家 正隆(大分大学医学部付属病院総合内科学第1) |
抄録 | 【目的】肥満は動脈硬化、高血圧、高脂血症、脂肪肝、糖尿病の発症に関与し、脳血管障害、虚血性心疾患、悪性疾患の大きな危険因子となりうる。肥満患者の追跡調査を行い、生活習慣病を合併した高度肥満に対して、肝・消化器病の専門医がどのように向き合っていけばいいかを考察した。【対象と方法】2000年から10年間に当科に入院したBMI30kg/m2以上の患者403人のうち現在もfollow中の患者128人を対象にし、患者背景及び冠動脈疾患、脳血管障害、悪性腫瘍の合併の有無などについて後ろ向き検討を行った。【結果】403人の平均follow期間は37.2±37.6ヶ月で、follow率は31.1%であった。現在もfollow中の患者の背景は、男性62例、女性66例、平均BMI 36.5±8.8kg/m2、入院時平均年齢48.6±17.0歳、follow期間60.5±32.0ヶ月であった。BMI 40kg/m2以上の高度肥満患者が27例(21.1%)、糖尿病合併は71例(55.5%)であった。follow中の合併症として、虚血性心疾患6例(4.7%)、脳血管障害2例(1.6%)、発癌14例(10.9%)であった。悪性腫瘍の内訳は、胃癌3例、上行結腸癌3例、肝細胞癌2例、乳癌2例、直腸癌1例、肺癌1例、甲状腺癌1例、子宮体癌1例、腎癌1例、膀胱癌1例であった。発癌群、非発癌群について解析を行ったところ、年齢、血小板値で有意差を認めた。【考察】肥満はインスリン抵抗性を背景に、脳血管障害、冠動脈疾患、悪性腫瘍の発症率が高いといわれている。当院の検討でも、一定の割合でこれらの疾患の合併を認めた。消化器系の発癌もみられ、肥満管理に積極的に消化器の専門医が関わる必要があることが示唆された。さらに、肥満患者の多くは発症直後から脂肪肝によるインスリン抵抗性を惹起しており、脂肪性肝炎から肝硬変症と進展する症例や心血管障害を発症する症例もみられ、予防の観点から、早期に肝臓専門医の介入が望まれる。しかし、肥満患者のfollow率は非常に低く、臨床上の管理の問題点である。【結論】肥満患者の管理に、肝消化器専門医は積極的に参加し、循環器・糖尿病代謝などの専門医と連携し、心血管イベントと肝・消化器癌発症の予防を目指す必要がある。 |
索引用語 | 高度肥満, 発癌 |