セッション情報 一般演題

タイトル 021:

胃、大腸、肝臓癌の同時性3重複癌に対して一期的に切除しえた1例

演者 佐々木 善浩(国立病院機構 熊本再春荘病院 消化器内科)
共同演者 小林 広典(国立病院機構 熊本再春荘病院 外科), 久保田 竜生(国立病院機構 熊本再春荘病院 外科), 山口 賢治(国立病院機構 熊本再春荘病院 外科), 外山 栄一郎(国立病院機構 熊本再春荘病院 外科), 大原 千年(国立病院機構 熊本再春荘病院 外科)
抄録 【症例】79歳:男性
【現病歴】2012年4月、近医の胸部CTで肝腫瘤指摘され、当院紹介。採血検査でC型肝炎(1型高ウイルス量)を認めた。胸腹部造影CTでS4に20mm強、早期相で造影され、後期相でwash outされたことから、肝細胞癌を考慮した。上部消化管内視鏡検査で、胃角部後壁大彎寄りに20mm大のIIc病変あり、生検でadenocarcinoma(tub1)を認めた。下部消化管内視鏡検査では、横行結腸に2/3周性の2型腫瘍を認め、生検でadenocarcinoma(tub1)を認めた。
【入院後経過】胃癌は、深達度sm深部の早期胃癌と診断し、他臓器への転移をきたすとまでは積極的には考えにくかった。大腸癌は、深達度が漿膜下層までの進行癌と診断した。肝腫瘤は原発の肝細胞癌と考えていたが、大腸癌からの転移を完全に否定できないことから、肝生検を施行した。
病理所見からは大腸癌等からの転移を疑わせる所見は認めなかったため、胃、大腸、肝臓の同時性3重複癌と考えた。外科転科となり、一期的に腹腔鏡下での幽門側胃切除、拡大右半結腸切除(D3)、肝部分切除(S4)を施行した。術後の病理診断では胃癌はstageIb(T1bN0M0)、大腸癌stageIIIb(ssN2M0)、肝癌stageI(T1N0M0)であった。
【考察】医療が普及し、高齢化が進行した現在、癌に罹患する人々は増加している。2重複癌は時に経験することはあっても、3重複癌は経験をすることは多くなく、本邦の報告でも癌患者の1%前後しかない。重複癌の臓器別では、胃、大腸癌の報告が多いが、肝細胞癌が含まれることは多くなく、本邦の報告例でも極少数である。今回の我々の症例では遺伝子検査等しておらず、学術的価値は少ないかもしれない。しかし、ひとつひとつの症例を報告することで、後世に何かしら役立つことを祈念し、文献的考察を加え報告する。
索引用語 3重複癌, 一期手術