セッション情報 専修医発表(卒後3-5年迄)

タイトル 専01:

ソラフェニブ治療により著効が得られたアルコール性肝硬変に合併したStage IIの肝細胞癌の一例

演者 柚留木 秀人(八代総合病院消化器内科)
共同演者 吉松 眞一(八代総合病院消化器内科), 吉岡 律子(熊本赤十字病院), 松野 健司(八代総合病院消化器内科), 山邊 聡(八代総合病院消化器内科), 浦田 昌幸(八代総合病院消化器内科), 田中 基彦(熊本大学消化器内科学), 島田 信也(八代総合病院消化器内科DELIMITER八代総合病院消化器外科), 佐々木 裕(熊本大学消化器内科学)
抄録 症例は60歳台男性。2005年頃よりアルコール依存症、高血圧に対して近医に通院中であった。2011年12月定期の腹部超音波検査で肝S4に径34×2mm大の辺縁低エコー帯を伴うモザイク状の腫瘤性病変認めた。腹部造影CT検査では40mmの腫瘤は早期濃染、後期洗い出し像を示し、PIVKA-IIは404mAIU/mLと上昇していたため肝細胞癌(Stage II)と診断した。HBs抗原陰性、HCV抗体陰性で、基礎の肝疾患はアルコール性肝硬変と診断、Child-Pugh score 5と肝予備能は良好であった。腫瘍因子、肝予備能からは外科切除の適応と考えられたが、高血圧、左浅大腿動脈血管形成術を必要とする動脈硬化の合併から外科治療は困難であった。高度の動脈硬化症のために肝動脈化学塞栓術は困難で、腫瘍径から経皮的ラジオ波治療も適応外と判断し、ソラフェニブによる治療を選択した。体格(体重45kg)を考慮して、標準量の半量の400mg/ 日で治療を開始した。導入後副作用としてはGrade1の手足症候群を認めたのみで、400mg/日の投与が継続可能であった。治療開始3か月の造影CTでは腫瘍径の縮小を認め、CT値から明らかな造影効果は消失しており、modified RESISTでCRと判断した。同時にPIVKA-IIは正常化した。一般的にStage IIの肝細胞癌に対しては、切除あるいはTACEが選択され、ソラフェニブ治療は切除、局所療法、TACEが困難な進行肝細胞癌が適応となる。本例は合併症のために他治療が困難であったためにソラフェニブ治療を選択し、少量投与によりCRが得られた。ソラフェニブ治療の効果予測因子は未だ明らかではないが、ソラフェニブは非進行肝細胞癌に対する治療としても検討すべきであることが示唆され、今回文献的考察を含めて報告する。
索引用語 ソラフェニブ, 肝細胞癌