セッション情報 一般演題

タイトル 097:

非代償性肝硬変に合併した後天性第5因子欠乏症の一例

演者 戸次 鎮宗(長崎医療センター肝臓内科)
共同演者 小森 敦正(長崎医療センター肝臓内科DELIMITER長崎医療センター 臨床研究センター), 釘山 有希(長崎医療センター肝臓内科), 佐々木 龍(長崎医療センター肝臓内科), 橋元 悟(長崎医療センター肝臓内科), 大谷 正史(長崎医療センター肝臓内科), はい 成寛(長崎医療センター肝臓内科), 佐伯 哲(長崎医療センター肝臓内科), 長岡 進矢(長崎医療センター肝臓内科DELIMITER長崎医療センター 臨床研究センター), 阿比留 正剛(長崎医療センター肝臓内科DELIMITER長崎医療センター 臨床研究センター), 山崎 一美(長崎医療センター肝臓内科DELIMITER長崎医療センター 臨床研究センター), 伊東 正博(長崎医療センター 臨床研究センター), 右田 清志(長崎医療センター 臨床研究センター), 八橋 弘(長崎医療センター肝臓内科DELIMITER長崎医療センター 臨床研究センター)
抄録 症例は61歳、男性。アルコール性肝硬変 (Child-Pugh B) および慢性腎不全で当院通院中であったが、200X年8月上旬に発熱とCRP高値を認め入院となった。入院後に黒色嘔吐と黒色便、意識障害が出現し、上部消化管出血および肝性脳症と診断し、第3病日に上部消化管内視鏡検査を施行した。多発胃潰瘍およびびらんからの出血を認めたため、焼灼止血を行いウシ由来トロンビン製剤散布により治療を終了した。一旦は止血し潰瘍も治癒過程にあることを確認したが、以後凝固能の低下が進行し、第24病日にはPT 6.3%(入院時同52.9%), APTT>150secにまで延長した。TT 43.8%/HPT 43.7%とPT/APTTとの活性解離を認めたため凝固因子を測定したところ、第5因子活性が<1%と特異的に低下していた。第31病日には第5因子抑制因子陽性と判明し、トロンビン製剤の使用を誘因とした後天性第5因子欠乏症と診断した。第5因子抑制因子産生抑制を目的とした免疫グロブリン大量投与を2度施行したが、凝固能の速やかな改善は得られず、黒色便の再燃にも赤血球輸血のみにて対応した。その後緩徐ながら凝固能の回復を認め (第66病日; PT 14.2%, APTT 106.0sec, 第5因子活性<1%、第99病日; PT 31.4%, APTT 56.6sec)、第5因子活性も第103病日には16%へと上昇し、第5因子抑制因子は陰性化した。ウシ由来トロンビン製剤に混入する微量第5因子と、医原性ヒト第5因子抑制因子との関連が報告されている。非代償性肝硬変における第5因子抑制因子の出現は、難治性出血性病変の原因ともなり、短期生命予後にも影響すると思われる。肝移植も視野に入れた非代償性肝硬変の治療に際して、ウシ由来トロンビン製剤の使用には十分な配慮が必要である。
索引用語 凝固, 肝硬変