セッション情報 シンポジウム「消化器疾患における新規治療法」

タイトル S2-13:

当院における潰瘍性大腸炎に対するタクロリムス使用経験(寛解導入と寛解維持効果について)

演者 小篠 洋之(大腸肛門病センター くるめ病院)
共同演者 荒木 靖三(大腸肛門病センター くるめ病院), 野明 俊裕(大腸肛門病センター くるめ病院), 岩本 一亜(大腸肛門病センター くるめ病院), 佐藤 郷子(大腸肛門病センター くるめ病院), 鍋山 健太郎(大腸肛門病センター くるめ病院), 新垣 淳也(大腸肛門病センター くるめ病院), 的野 敬子(大腸肛門病センター くるめ病院), 岩谷 泰江(大腸肛門病センター くるめ病院), 高野 正博(大腸肛門病センター くるめ病院), 白水 和雄(久留米大学 外科), 光山 慶一(久留米大学 消化器内科)
抄録 【目的】潰瘍性大腸炎(以下,UC)に対する薬物治療において2009年7月に中等症から重症のステロイド(prednisolone:PSL)抵抗性・依存性(いわゆる難治性)UCの寛解導入にタクロリムス(tacrolimus:TAC)が承認され現在,広く普及しつつある.そこで当院におけるUCに対するTAC使用経験をもとに,その寛解導入効果とその後の寛解維持治療について検討する.【対象と方法】2011年1月から12月までにTACによる寛解導入療法を施行した難治性・活動期UC7例(男性3例,女性5例)を対象とした.投与方法は初回投与量を1回0.05mg/kg(経口摂取群)または0.04/kg(絶食,静脈栄養管理)を1日2回経口投与し,3~4日目に初回の血中濃度を測定する.以後,可及的速やかに血中濃度を10~15ng/ml(高トラフ値)に達するよう適宜用量調節を行っていく.【結果】TAC投与後の内視鏡検査にて癌が検出され,投与中止し手術となった1例を除外した7例で検討したところ平均年齢は41.3歳(26~57歳),平均罹患期間は43.0ヶ月(1~148ヶ月)であった.臨床的重症度分類は全例中等症から重症で平均DAI(disease activity index)は8.1点,PSL抵抗性が1例,依存例が6例であった.TAC投与前のPSL総投与量は平均2320mgであった.7例中6例は平均85日間の投与がなされたが,1例は経過中に劇症化したため投与中止し手術となった.投与終了時は6例とも寛解(DAI≦2点)が得られ,寛解導入率は85.7%であった.寛解維持療法として全例にアザチオプリンが投与なされるも1例で急性増悪し緊急手術となり,別の1例でステロイド強力静注療法を行い今後,手術を検討している.【結語】TACは難治性の活動期UCに対する高い寛解導入効果を有する薬剤であるが,寛解導入後は速やかに寛解維持療法を併用する必要があると思われた.
索引用語 潰瘍性大腸炎, タクロリムス