セッション情報 専修医発表(卒後3-5年迄)

タイトル 専21:

diverticular colitisから潰瘍性大腸炎に進展した一例

演者 松野 雄一(福岡赤十字病院消化器内科)
共同演者 井原 勇太郎(福岡赤十字病院消化器内科), 松坂 朋子(福岡赤十字病院消化器内科), 川本 徹(福岡赤十字病院消化器内科), 藤田 恒平(福岡赤十字病院消化器内科), 平川 克哉(福岡赤十字病院消化器内科), 中房 祐司(福岡赤十字病院外科), 栗原 秀一(福岡赤十字病院病理診断科), 中島 豊(福岡赤十字病院病理診断科), 松本 主之(九州大学病院病態機能内科学)
抄録 症例は69歳女性。2008年6月、排便時の下血で受診、S状結腸に粘膜の肥厚と発赤を認め、注腸X線検査でS状結腸に多発する憩室と伸展不良を認めた。大腸憩室炎の診断で抗生物質などの投与を行ったが、内科的治療に抵抗するため、2009年1月にS状結腸切除術を行った。しかし、2010年2月に再び下痢が出現し、大腸内視鏡検査で吻合部口側のS状結腸に区域性にびまん性の粗造粘膜を認めた。2010年6月には、下痢・下血が頻回となり、大腸内視鏡検査では直腸から連続するびまん性発赤を認め、潰瘍性大腸炎と診断して5-ASA製剤の投与を開始した。しかし、症状は慢性持続型で経過し、2011年2月には直腸Rsと吻合部口側のS状結腸に区域性に粘膜粗造を認め、2011年4月には直腸から吻合部の口側に連続する高度の粘膜粗造と潰瘍を認め、重症潰瘍性大腸炎として入院となった。完全静脈栄養とPSL80mgによる治療を開始したが難治性で、CMV陽性であったためガンシクロビルの投与を開始した。白血球除去療法、ステロイド注腸療法、シクロスポリン静注療法でやや改善傾向を示したが、タクロリムスに変更後は再び増悪を認めたため、大腸全摘術+人工肛門造設術を行った。切除標本の病理学的所見は、粘膜に高度の炎症細胞浸潤を認め潰瘍性大腸炎として矛盾しない所見であった。diverticular colitisは、大腸憩室症に合併して区域性に粘膜の炎症を認める病態であり、経過中に潰瘍性大腸炎を発症する症例も報告され、両疾患の間に関連性が指摘されている。自験例は、2008年に大腸憩室炎として手術が行われたが、当時のX線・内視鏡所見と切除標本の病理所見を検討するとdiverticular colitisとして矛盾しないものであり、その後は区域性潰瘍性大腸炎を経て、典型的な左側結腸炎型の潰瘍性大腸炎に進展したと考えられる。diverticular colitisについては本邦での報告例はまだ少なく、潰瘍性大腸炎に進展するまでの臨床経過を観察しえた貴重な症例と考えられたため報告する。
索引用語 diverticular colitis, 潰瘍性大腸炎