セッション情報 一般演題

タイトル 24:

肝浸潤を疑う特発性好酸球増多症の一例

演者 大江 迪子(金沢大学附属病院 消化器内科)
共同演者 柳瀬 祐考(金沢大学附属病院 消化器内科), 冨永 桂(金沢大学附属病院 消化器内科), 齊藤 奈津子(金沢大学附属病院 消化器内科), 吉田 功(金沢大学附属病院 消化器内科), 金子 周一(金沢大学附属病院 消化器内科)
抄録 症例:69歳女性 既往歴:脂質異常症、高血圧症、慢性副鼻腔炎 家族歴:特記事項なし 現病歴:2012年3月に発熱のため近医を受診し、血液検査で白血球上昇、肝胆道系酵素上昇が認められ、当院救急外来に紹介となった。来院後の経過:血液検査で好酸球増多を伴う白血球上昇23220/μl(好酸球数 15000/μl) 、AST127IU/L、ALT311IU/L、γGTP69IU/L、ALP569IU/Lであった。腹部造影CTで肝実質の不整濃染像、胆嚢・総胆管の壁肥厚、腹水が認められ、MRIでも同様の所見であった。胆管炎が否定できないため抗生剤投与を行うも、解熱せず血液検査上の改善も認めなかった。好酸球増多の原因に関して、二次性好酸球増多の除外のために、血液検査、検便、骨髄穿刺、FISH法による遺伝子変異検査(FIP1L1/PDGFRA)を行ったが異常を認めなかった。このため、寄生虫感染、膠原病、白血病類縁疾患等は否定され特発性好酸球増多症(HES)と診断した。肝実質不整濃染像の原因を明らかにするために、腹水、血小板減少を認めるために経静脈的肝生検を第8病日に予定した。しかし、第5病日に呼吸困難、SpO2低下が出現し、画像上も胸腹水の増加、腸管浮腫の増悪が認められた。好酸球性心筋症による心不全が疑われたが心エコー上否定された。HESに伴うサイトカインストームが原因と考えた。このため第5病日よりプレドニゾロン50mg/日による治療を開始した。プレドニゾロン投与翌日には解熱し、翌々日に好酸球数も正常化した。第8病日に施行した経静脈的肝生検で肝に好酸球浸潤は認められなかったが、治療により画像上の肝不整濃染像や、血液検査上の肝胆道系酵素の上昇が改善した。これらよりCT、MRIにて認められた浸潤性の肝病変もHESによるものと推測された。その後、プレドニゾロンを漸減するが、症状の再発は認められていない。考察:HESは稀な疾患であり、好酸球の臓器浸潤によって症状が出現する。治療は、FIP1L1/PDGFRA遺伝子変異が陰性の場合はステロイド、陽性の場合はイマチニブが有効である。本症例もステロイド投与に良好な反応がみられたHESが原因と考えられた。
索引用語 特発性好酸球増多症, 肝浸潤