セッション情報 一般演題

タイトル 18:

短期間に反復し、α-グルコシダーゼ阻害薬の関与が示唆された腸管嚢腫様気腫症の1例

演者 渡邉 利史(八尾総合病院 外科)
共同演者 笹原 のり子(八尾総合病院 外科), 根塚 秀昭(八尾総合病院 外科), 齊藤 智裕(八尾総合病院 外科), 江嵐 充治(八尾総合病院 外科), 山田 一樹(八尾総合病院 内科), 南部 修二(八尾総合病院 内科), 藤井 久丈(八尾総合病院 内科)
抄録 腸管嚢腫様気腫症は、消化管壁に多房性の含気性嚢胞を形成する比較的稀な疾患であり、その成因には諸説がある。今回我々は、1か月以内という比較短期間に反復したもののいずれも保存的に改善し、α-グルコシダーゼ阻害薬の中止により症状が消失した1例を経験したため、文献的考察を加えて報告する。
症例は59歳男性。2型糖尿病加療のため当院内科通院中であり、2年前よりグリメピリドとアカルボースの処方を受けていた。1週間前より出現した下腹部痛を主訴に受診。バイタルサインおよび血液検査所検査では有意な異常所見は認めなかったが、右下腹部に圧痛があり、腹部X線検査で上行結腸から横行結腸にかけて蜂巣状のガス像を認め、CT画像で同部位の腸管壁に含気性嚢胞が確認されたため、腸管嚢腫様気腫症と診断し保存的加療(絶飲食, 補液, 高圧酸素療法)を行った。第6病日には腹部症状および画像所見も改善したため経口摂取を再開し、第8病日退院となった。退院2週間後、再び下腹部痛が出現したため受診し、同様の画像所見から腸管嚢腫様気腫症と診断し再入院となった。初回入院時と同様の保存的加療を行い、第11病日に退院となった。再入院時よりα-グルコシダーゼ阻害薬の関与が疑われ、同薬を中止しておりその後は再発なく経過していることから、α-グルコシダーゼ阻害薬が腸管嚢腫様気腫症の発症に関与していたと考えられた。
腸管嚢腫様気腫症の病因には機械的な腸管内圧の上昇や腸内細菌の腸管ガス産生によるもの、あるいは慢性閉塞性肺疾患などに伴い縦隔・後腹膜・腸間膜経由で腸管壁に気腫を生じるなどの諸説があるが、α-グルコシダーゼ阻害薬などの薬剤に起因するという病態も考えられている。α-グルコシダーゼ阻害薬は、腸管内での炭水化物の加水分解を阻害するため、これに伴う腸内細菌および腸管ガスの増加から、腸管壁の気腫を引き起こすものと考えられる。
索引用語 腸管嚢腫様気腫症, α-グルコシダーゼ阻害薬