セッション情報 一般演題(研修医(卒後2年迄))

タイトル 48:

線維形成性小円形細胞腫の1例

演者 笹林 大樹(富山県立中央病院)
共同演者 堀田 洋介(富山県立中央病院), 織田 典明(富山県立中央病院), 木田 明彦(富山県立中央病院), 宮澤 正樹(富山県立中央病院), 水上 敦喜(富山県立中央病院), 平井 聡(富山県立中央病院), 島谷 明義(富山県立中央病院), 松田 耕一郎(富山県立中央病院), 平松 活志(富山県立中央病院), 松田 充(富山県立中央病院), 荻野 英朗(富山県立中央病院), 野田 八嗣(富山県立中央病院)
抄録 【症例】37歳、男性【既往歴】溶連菌感染症、IgA腎症【家族歴】叔父:肺癌【現病歴】2012年4月頃から、腹部膨満感を認めたため、近医を受診した。その際施行された腹部エコーで多発腹部腫瘤を指摘されたため、6月T病院紹介受診となった。造影CTでも腹腔内から骨盤内にかけて大小の多発する結節・腫瘤を認め、不均一な造影効果を有した。PETでは腫瘤に一致して集積を認めた。精査目的に腹腔鏡下腫瘍生検を施行され、大量血性腹水・腹膜播種が認められた。播種病変の一部が摘出され、病理検査で繊維形成性小円形細胞腫(Desmoplastic small round cell tumor:以下DSRCT)と診断された。腹膜播種を認め根治的手術は不可能であり、稀な疾患であったため、国立Gセンター紹介。同院での病理再検でも同様の診断で、遺伝子検査(FISH法)でもEWS遺伝子の再構成が証明され確定診断となった。当院で化学療法を行う方針となり、7月化学療法目的に紹介入院となった。化学療法開始し、アドリアシン(ADR:110mg/b、60mg/m2)を投与した。副作用として発熱性好中球減少症(Grade3)が出現し、シプロキサン、グランにて治療。この頃より下腿浮腫の増悪あり、原因検索目的にCTを施行した所、腹部腫瘤の著明な増悪があり多発肝転移も顕在化してきたためADRはPDと診断。二次療法としてイホマイド(IFM)を考慮するも全身状態の悪化で施行できず、7/31よりダカルバジン(DTIC 350mg/b/day×5days)を開始した。【考察】DSRCTは軟部組織肉腫の1分類で、小児または若年男性にみられる。男女比は4:1で、平均予後は29ヶ月とされている。後腹膜より発生した腹腔内多発腫瘤として認められ広範に転移浸潤する。EWS/WT1遺伝子の(t11;22)(p13:q12)染色体転座を証明することが確定診断となる。腫瘍マーカーとしてCA125やNSEが挙げられるが、その上昇は軽度。手術不可能な場合、DSRCTとしての確立された治療法はないため、一般的な軟部肉腫に準じてアドリアシン(ADM)やイホマイド(IFM)による化学療法が行われるが、奏効率はどちらも20~30%である。本症例は文献報告例が数百と稀な疾患であり、興味深いと思われたため報告する。
索引用語 線維形成性小円形細胞腫, 若年発症の腹腔内腫瘍性病変