セッション情報 一般演題(研修医(卒後2年迄))

タイトル 39:

異所性ACTH産生によるCushing症候群を呈した膵神経内分泌腫瘍(pNET)の一例

演者 北 稚奈(国民健康保険小松市民病院内科)
共同演者 吉光 雅志(国民健康保険小松市民病院内科), 松本 裕幹(国民健康保険小松市民病院内科), 大石 岳(国民健康保険小松市民病院内科), 後藤 善則(国民健康保険小松市民病院内科), 又野 豊(国民健康保険小松市民病院内科), 亀田 正二(国民健康保険小松市民病院内科), 辻端 亜紀彦(国民健康保険小松市民病院病理科)
抄録 症例は65歳女性。高血圧症、脂質異常症にて近医通院中に突然の血圧コントロール悪化、ふらつき、脱力感が出現し当院に紹介となった。血液検査にて低カリウム血症、肝胆道系酵素上昇、血糖高値を、腹部造影CT検査にて多発性肝腫瘍、膵頭部腫瘍、リンパ節腫大を認めた。FDG-PET検査では肝に集積を認めたがその他の膵、リンパ節等に集積を認めなかった。さらに上部消化管内視鏡検査にて十二指腸に潰瘍を伴う粘膜下腫瘍様隆起を認め、生検を施行したところ免疫染色にて神経内分泌マーカー陽性の腫瘍細胞を認めた。以上から多発肝転移、十二指腸浸潤、リンパ節転移を伴う膵神経内分泌腫瘍(pNET)と診断した。腫瘍細胞はセロトニン強陽性、ソマトスタチン・VIP部分陽性、ACTH陰性であった。MIB-1陽性率は50%、核分裂像数は15/10HPFであり、WHO2010分類のNETG2ないしはNECに相当すると考えられた。また、コントロール不良の高血圧、低カリウム血症、耐糖能障害からCushing症候群を疑い内分泌検査、デキサメタゾン0.5mg抑制試験を行った結果ACTH依存性Cushing症候群と診断された。画像検査で下垂体腫瘍を認めずCRH負荷に無反応であり、pNETによる異所性ACTH産生症候群と考えられた。腫瘍はすでに多発性に転移し切除困難であったためCPT11+CDDP併用化学療法を実施し、ホルモン過剰分泌症状に対しソマトスタチンアナログも開始した。化学療法1コース目にgrade4の好中球減少が出現したため2コース目からは減量を余儀なくされたが、血液検査で肝胆道系酵素の改善、画像検査で腫瘍の縮小が認められており、ホルモン過剰分泌症状の高血圧、糖尿病についてもコントロールできている。今回異所性ACTH産生症候群を呈するpNETという稀な症例を経験した。本疾患はWHO2010分類でのグレードにより治療方針が変わるため病理診断が重要だが、本症例では生検組織のみであったため正確な診断が難しく、肝生検を含めた再検も考慮すべきであったと考える。
索引用語 膵神経内分泌腫瘍, 異所性ACTH産生腫瘍