セッション情報 一般演題(専修医(卒後3-5年))

タイトル 07:

胃重複症に膿瘍を合併したと考えられた一例

演者 藤原 秀(金沢赤十字病院 消化器病センター)
共同演者 高田 昇(金沢赤十字病院 消化器病センター), 玉井 克利(金沢赤十字病院 消化器病センター), 寺崎 修一(金沢赤十字病院 消化器病センター), 岩田 章(金沢赤十字病院 消化器病センター), 木本 達哉(金沢赤十字病院 放射線科), 吉尾 里夏(金沢赤十字病院 放射線科)
抄録  【症例】80歳代、女性【主訴】発熱、腰痛【既往歴】52歳甲状腺手術、80歳 右大腿骨頚部骨折 人工骨頭置換術【現病歴】2012年7月10日、右側腹部から腰部にかけての疼痛が出現した。7月16日夕より悪寒を伴う腰痛の増悪を認めたため当院救急受診となった。身体所見上は左側腹部痛に圧痛を認めた。血液検査ではWBC 13200/mm3,CRP 9.91mg/dl,BUN 61.8mg/dl,CRE 5.03mg/dlと炎症反応および腎機能低下を認めた。腹部CTでは左横隔膜直下、胃体上部大彎に隣接したsoft tissue density の腫瘤を認めた。MRIではHASTE画像で病変内に高信号領域を認め、液体の貯留を伴う嚢胞性病変が考えられた。また拡散強調画像で著明な高信号を呈し、腫瘍や炎症の存在が考えられた。上部消化管内視鏡を施行したところ体上部大彎に粘膜下腫瘍様の隆起を認めた。ボーリング生検を施行したところ同部より白色の排膿を認めた。培養ではProteus vulgarisおよびEscherichia coliが同定された。後日再度内視鏡を施行し、膿瘍腔内腔へカニューレを挿入して造影を行ったところ内面がひだ状を呈する2cm大の膿瘍腔を認めた。EUSを用いて腫瘤を観察すると胃壁の筋層に接した嚢胞性病変として描出され、壁は筋層よりもやや高エコーで内腔に向かってひだ状に突出していた。以上の検査結果より病変は胃に連続する内部にひだ状の構造を有した嚢胞性病変であり、組織学的に証明はできていないが重複胃の可能性が考えられた。テクネシウムによる胃粘膜シンチでは病変に明らかな集積は認めなかった。脊椎奇形は認めなかった。排膿後、画像上で腫瘤は縮小化し、MRI拡散強調画像での高信号もほぼ消失した。【考察】消化管重複症は比較的まれな消化管奇形であり、消化管に隣接する、消化管筋層に連なる平滑筋を有する、内面が消化管粘膜上皮で覆われている、の3項目で定義される。この3項目を満たさない例も広義に扱われている。胃重複症は消化管重複症の中でも2-8%と頻度が低いものとされる。合併症として癌および潰瘍の報告があるが、本症例のように膿瘍を形成した報告はなく文献的考察を加えて報告する。
索引用語 胃重複症, 消化管重複症