セッション情報 一般演題

タイトル 19:

多発性肝転移、多発性肺転移を伴ったS状結腸原発肝様腺癌の1例

演者 伊井 徹(厚生連滑川病院 外科・胃腸科)
共同演者 八木 康道(厚生連滑川病院 外科・胃腸科), 田中 茂弘(厚生連滑川病院 外科・胃腸科), 小栗 光(厚生連滑川病院 内科)
抄録 【症例】51歳、男性【主訴】発熱、上腹部痛、全身倦怠感【現病歴】平成24年6月下旬より発熱、上腹部痛、全身倦怠感を認め、7月上旬に近医を受診し採血にて白血球増加と肝機能障害、腹部CTにて肝左葉の腫瘍を指摘され当院に紹介された。【入院時検査結果】白血球 12000 /μl, CRP 30.62 mg/dlと高度な炎症所見とAST 140 IU/l, ALT 139 IU/l, γ-GTP 207 IU/lと中等度の肝障害を認めた。腫瘍マーカーはCEA 5.6ng/ml, CA19-9 3.7 U/ml, CA125 9.7 U/mlとCEAがわずかに高値を示した。【入院時画像診断】腹部CTでは肝S2/3/4をほぼ置換する肝腫瘍を認め内部は広範に壊死を呈していた。胸部CTでは両肺に多発する5-10mmの腫瘤を認めた。大腸内視鏡検査ではS状結腸に4.5×4.0cm大の1型腫瘍を認め生検で中分化~低分化腺癌であった。なお、骨スキャン、脳MRIでは明らかな転移巣は認めなかった。【診断と治療】多発性肝転移、多発性肺転移を伴うS状結腸癌と診断した。広範な壊死を伴う肝腫瘍の感染合併が発熱、上腹部痛の原因と考えられ抗生剤の投与を行い炎症所見が改善した後に、S状結腸切除術(D2)を施行した。【病理診断】S状結腸原発の肝様腺癌、pSS, int, INFb, ly1, v1, pN1(2/3), pPM0, pDM0, pRM0であり、EGFR免疫染色は標本の一部で陽性、KRASは野生型であった。【術後検査結果】病理結果判明後の採血ではAFP 75700 ng/ml, PIVKAII ≧75000 mAU/mlと共に著明な高値を呈していた。【術後の治療】大腸原発の肝様腺癌に対する抗がん剤治療のレジメンの報告はほとんどないが、本症例に対しては一般的な大腸癌の抗がん剤治療に準じてアバスチン+mFOLFOX6を施行中である。【考察】肝様腺癌の発生臓器は、胃、食道、大腸、膵、胆嚢、卵巣、卵管、子宮、膀胱、肺など様々であるが、大腸から発生した肝様腺癌は極めて稀である。また、肝様腺癌の特徴の一つは抗がん剤が効きにくく予後が極めて不良なことである。今回、S状結腸原発肝様腺癌に対し原発巣を切除し、転移巣に対して抗がん剤治療を継続中の症例を経験したので報告する。
索引用語 大腸, 肝様腺癌