セッション情報 一般演題

タイトル 49:

保存的に軽快した門脈ガス血症の一例

演者 佐藤 幸浩(かみいち総合病院 内科)
共同演者 温井 剛史(かみいち総合病院 外科), 丸岡 秀範(かみいち総合病院 外科), 宮田 左門(かみいち総合病院 放射線科), 折戸 信暁(金沢大学 放射線科), 井上 大(金沢大学 放射線科)
抄録 症例は86歳女性 主訴は腹痛、嘔吐、下痢既往に婦人科の手術歴あり。高血圧、糖尿病にて内服加療中。現病歴は デイサービス利用中に突然 腹痛、嘔吐、下痢が出現し救急車を要請、搬入された。来院時身体所見では身長146cm 体重55kg 血圧148/66mmHg  脈拍62/分 整 体温36.1℃ 結膜 貧血 黄疸なし 頸部リンパ節腫脹、甲状腺腫触知せず 胸部 ラ音なし 心雑音聴取せず。 腹部 腸音やや亢進 下腹部中心に圧痛を認めたが腹膜刺激症状はなし。検査成績 WBC 5900 RBC 421×104 Hb13.1 Ht 38.9 Plt14.3 ×104 AST 19 ALT 8 LDH 148 ALP 295 γGTP 16 T-BIl 0.4 CPK 31 TP 6.8 Alb 4.0 Na 143 Cl 107 K 3.9 Ca 8.7 BUN 23 Cr 0.76 CRP 0.1 PH 7.373 PCO2 38.9 PO2 81.7 HCO3 22.1 BE -2.8 腹部CTでは 肝内外の門脈および上腸管膜静脈、脾静脈に大量のガスをみとめた。条項結腸の拡張、回腸のわづかな壁肥厚を認めたが明らかな気腫、造影不良は認めなかった。臨床経過 門脈ガス血症をみとめたが腹膜刺激症状なく、CTではあきらかな腸管気腫、虚血所見を認めなかったため絶食、輸液、抗生剤使用にて保存的に加療を開始した。経過中下血を認め、翌日は下腹部の痛みが増強、下腹部に限局した反跳痛が出現した。CTでは軽度の腹水と下腹部の回腸に連続する壁肥厚があきらかとなった。超音波検査では腸管の壁肥厚をみとめるものの同部位の腸管の蠕動を認めたため保存的加療を継続した。その後下血はなくなり、腹部症状も徐々に改善し7日目のCTでは門脈ガスは消失、腸管の浮腫も軽快してきており経口摂取を開始した。考察 本例では著明な門脈ガス血症をみとめたが来院時のCTでは腸管の異常、血行障害はあきらかではなかった。経過中に下血を認め翌日のCT 、USで腸管の浮腫は著明であったが腸管蠕動を認めており腸管壊死の可能性は高くないと判断し保存的に加療し軽快した。門脈ガス血症は腸管壊死を伴う場合は予後が悪いとされているが、壊死を伴わない場合保存的に軽快する例もあり、身体所見や画像検査を含めた検査所見を総合的に判断することが重要と考えられた。
索引用語 門脈ガス血症, 保存的治療