セッション情報 一般演題

タイトル 31:

DICまで合併した胆管炎を背景に発症した肝炎症性偽腫瘍の1例

演者 水上 敦喜(富山県立中央病院 内科)
共同演者 織田 典明(富山県立中央病院 内科), 木田 明彦(富山県立中央病院 内科), 宮澤 正樹(富山県立中央病院 内科), 平井 聡(富山県立中央病院 内科), 島谷 明義(富山県立中央病院 内科), 堀田 洋介(富山県立中央病院 内科), 松田 耕一郎(富山県立中央病院 内科), 平松 活志(富山県立中央病院 内科), 松田 充(富山県立中央病院 内科), 荻野 英朗(富山県立中央病院 内科), 野田 八嗣(富山県立中央病院 内科)
抄録 【症例】77歳、女性【既往歴】45歳 胃全摘術(胃癌)【現病歴】3日前からの倦怠感、腹痛、下痢を認め、近医受診し感冒の診断で補液を受けた。改善なく、食事摂取も不能となったため当院を受診した。【入院時現症】体温38.8℃、右上腹部に自発痛、圧痛なし【検査結果とその後の臨床経過】血液生化学検査では、白血球数11600,分画Neut 90%,Hb 11.2g/dL,Plt 89000,AST 279IU/L,ALT 228IU/L,ALP 544IU/L,γ-GTP 33IU/L,T-Bil 1.9mg/dL,CRP 35.3mg/dLと肝胆道系酵素および炎症反応の著明な上昇を認めた。腹部骨盤部CTでは、肝左葉門脈臍部中心に70mm大の境界明瞭な低吸収域を認め、この病変は、dynamicでは早期後期共に乏血性で、内部に正常の脈管構造、グリソン鞘が貫通する腫瘤が認められ、輪状濃染や楔状の造影効果は認めなかった。肝左葉腫瘍は、CT上は肝炎症性偽腫瘍、悪性リンパ腫などが鑑別として挙げられた。また、CT上肝実質濃染の不均一、胆嚢結石と胆嚢壁の浮腫状肥厚が認められ、胆管炎・胆嚢炎が推測された。重症感染症として、ソルメドロール125mgを3日間併用しつつメロペネム2g/日を治療開始した。翌日にはPlt13000,PT-INR1.12,AT-3 39%,FDP 87.2μg/mLとDIC所見を呈し、トロンボモデュリン製剤投与、血小板・FFP輸血も併用した。入院時の血培では、Klebsiella pneumoniaeが検出された。DIC、胆管炎ともに急速に軽快し、第10病日に行ったERCPでは、肝内胆管に腫瘤による軽度の圧排を認めるも閉塞起点は認めなかった。第12病日の肝腫瘍生検では、肝細胞の広範な壊死・脱落が認められ、脱落部には繊維芽細胞の増生・肉芽形成が認められた。肉芽部には好中球浸潤がやや目立ち、形質細胞及びリンパ球浸潤も認められ、炎症性偽腫瘍に矛盾しない所見であった。IgG4免疫染色では、IgG4陽性細胞の増加は認めず、胆管炎と関連した炎症性偽腫瘍の可能性が推測された。胆管炎治癒後第45病日に行った造影CTでは、肝左葉腫瘤は著明に縮小していた。【結語】以上、DICまで合併した胆管炎を背景に発症した肝炎症性偽腫瘍の稀な1例を報告した。
索引用語 肝炎症性偽腫瘍, 胆管炎