セッション情報 一般演題(専修医(卒後3-5年))

タイトル 41:

通常型膵癌に膵IPMNと胃GISTを合併した1例

演者 加藤 嘉一郎(福井県済生会病院 外科)
共同演者 寺田 卓郎(福井県済生会病院 外科), 三井 毅(福井県済生会病院 外科), 真田 拓(福井県済生会病院 内科), 松田 尚登(福井県済生会病院 内科), 宮山 士朗(福井県済生会病院 放射線科), 須藤 嘉子(福井県済生会病院 病理部)
抄録 症例は60歳代男性.上腹部痛を主訴に受診した.採血ではHbA1cが11.2%と高値であり,重度の耐糖能障害を認めた.造影CTでは膵体尾部移行部に径15mm程度の遅延性に淡く濃染される領域があり,膵癌が疑われた.また腫瘍より尾側の膵管は拡張し,嚢胞状構造を認めた.また腫瘍より頭側の膵管の拡張は認めないが,膵頭部にも小嚢胞状構造を認めた.胃前庭部には径20mm程度の比較的境界明瞭で内部が均一な腫瘍を認めた.膵腫瘍はMRIで拡散強調像にて高信号を呈しており,また,脾動脈・静脈周囲にも拡散強調像にて高信号を呈す軟部陰影を認めており,膵癌の進展,リンパ節転移を疑った.上部消化管内視鏡では幽門部付近に20mm程度の有茎性の粘膜下病変を認め,先端は幽門輪にはまり込み,ball valveをきたした状態であった.頻度,超音波内視鏡の所見よりGISTが疑われた.胃病変に対して診断的加療のためESDを施行した.病理結果ではKITは陰性であったが,CD34陽性,SMA陰性,S100陰性であり,また,核分裂像は5個/50視野以下で,低悪性度のGISTと診断した. 以上より膵体部膵管癌もしくは膵IPMC(cT3N1M0 stage3),分枝型IPMN,胃GISTを合併した病態と考えた.膵体部癌に対し,尾側膵切除(脾合併D2郭清)を施行した.腫瘍は胃壁および左胃動脈への浸潤が疑われ,胃全摘術を要した.病理診断では膵腫瘍は通常型膵菅癌であり,リンパ節転移は認めないが,周囲脂肪織浸潤,胃筋層への浸潤を認めた.また,嚢胞状病変は粘液性変化を伴う微小の腫瘍性病変であり,分枝型IPMNと診断された.膵菅癌はIPMNと接しているが,移行像はなく,IPMN由来の癌(IPMC)は否定的であった. 膵IPMNに通常型膵癌および他臓器癌が合併することは知られているが,ball valveをきたした胃GISTを合併したまれな症例を経験したためここに報告する.
索引用語 通常型膵癌, 膵IPMN