セッション情報 一般演題

タイトル 17:

当科で経験したLymphocytic colitisの1例

演者 濱田 和(金沢医科大学病院 内視鏡科)
共同演者 川浦 健(金沢医科大学病院 内視鏡科), 岡村 英之(金沢医科大学病院 内視鏡科), 北方 秀一(金沢医科大学病院 内視鏡科), 浦島 左千夫(金沢医科大学病院 内視鏡科), 伊藤 透(金沢医科大学病院 内視鏡科)
抄録 【緒言】Microscopic colitis(MC) は1か月以上続く慢性の水様性下痢を認め、肉眼上はほぼ正常の腸粘膜であるが病理組織学的に慢性炎症所見を認める疾患であり、Collagenous colitis(CC)、Lymphocytic colitis(LC)の総称として位置づけられている。近年、本邦におけるMCの報告例が増加しているが、CCと比べてLCの報告例は少ない。今回、LCと思われる1例を文献的考察を加えて報告する。【症例】79歳、女性。約半年前から1日3~4行の水様性下痢を認めており、当科紹介受診された。全大腸内視鏡検査では、肉眼上は明らかな炎症性変化は見られなかった。内視鏡所見が軽微であった事などからCC、LCなどを疑い、大腸粘膜5か所から生検を施行した。全ての生検検体において粘膜固有層から上皮内に中等度のリンパ球浸潤像を認めた。明らかなCollagen bandは認めなかった。肉眼的、病理学的所見共にLCとして矛盾しない所見を呈しており、また他疾患を積極的に疑わせる所見に乏しい事から、LCと診断した。【考察】CC、LCは共に60~70歳代に多く、女性に好発する傾向がある。またCCはNSAIDsやランソプラゾールなどと、LCはSSRIなどとの関連性が指摘されている。本症例は高齢の女性であり、複数の抗うつ薬の内服歴があった事から、同剤がLC発症に寄与していた可能性があると考えられた。MCの治療としてメサラジンやブデソニドの有用性が報告されているが、本邦ではいずれも保険適応外である。本症例は抗うつ薬の中止もしくは変更は難しく、現在は整腸剤などによる対症療法を行っている。症状によりQOLが保たれないようであれば、上記薬剤による治療を試みる予定である。特徴的な所見であるCollagen bandを有するCCと異なり、LCは炎症細胞浸潤像を呈するのみであり、内視鏡医と病理医が共にLCを鑑別に挙げなければ見逃される場合も少なくない。慢性的な水様性下痢を認め、内視鏡検査では殆ど異常所見を認めない場合は、LCも念頭において生検を行い、また病理医と密に連携を取る事が重要であると考える。
索引用語 Lymphocytic colitis, 水様性下痢