セッション情報 一般演題(専修医(卒後3-5年))

タイトル 26:

Tolosa-Hunt症候群様症状を呈した肝細胞癌の1例

演者 木田 明彦(富山県立中央病院 内科)
共同演者 荻野 英朗(富山県立中央病院 内科), 織田 典明(富山県立中央病院 内科), 宮澤 正樹(富山県立中央病院 内科), 水上 敦喜(富山県立中央病院 内科), 平井 聡(富山県立中央病院 内科), 島谷 明義(富山県立中央病院 内科), 堀田 洋介(富山県立中央病院 内科), 松田 耕一郎(富山県立中央病院 内科), 平松 活志(富山県立中央病院 内科), 松田 充(富山県立中央病院 内科), 野田 八嗣(富山県立中央病院 内科)
抄録 【症例】69歳男性で、2002年より慢性B型肝炎にて当院へ通院していた。2004年2月より肝細胞癌を認め、肝動脈化学塞栓療法(TACE)、ラジオ波焼灼術(RFA)を複数回施行し、2011年11月に肺転移を認めたため、ソラフェニブトシル酸塩400mgを内服開始となっていた。2012年6月のCT検査では、肝内の肝細胞癌は良好にコントロールされていたが、肺転移は増大を認めていた。2012年6月中旬頃より、左眼の疼痛と右方視で複視を認めるようになった。神経学的所見では、左眼全方向性の眼球運動制限と三叉神経領域の感覚障害を認め、眼窩造影MRIでは、左眼窩先端部~海綿静脈洞部にT1強調像で等~軽度高信号、T2強調像で等~軽度低信号を認めたため、Tolosa-Hunt症候群が疑われた。髄液検査を含め、真菌感染や悪性リンパ腫の検索も施行したが、明らかな異常は認めなかったため、Tolosa-Hunt症候群として、プレドニゾロン60mg内服を開始したところ、投薬後1週間で眼痛症状は改善するも、2週間目で再度眼痛症状が増悪した。これより、典型的な炎症性肉芽腫病変ではなく、腫瘍性病変が疑われたため、下垂体ダイナミックMRIを撮影したところ、dynamic study では造影早期相で全体が濃染し、造影後期相では造影剤の wash out がみられ、造影パターンからは多血性腫瘍性病変が示唆された。また、ややサイズが増大している所見を認めたため、肝細胞癌の海綿静脈洞転移と診断した。病変の増大防止、縮小、消失を目的に放射線治療を2Gy/日×25回を施行した。臨床所見では、眼痛の消失を認め、複視については改善は認めるも消失はしていない。【考察および結語】肝細胞癌の海綿静脈洞転移によりTolosa-Hunt症候群様症状を呈した症例は、非常に稀であり、医中誌の検索では、胃癌転移、甲状腺癌転移、悪性リンパ腫など4例の症例報告を認めるのみであった。以上、Tolosa-Hunt症候群様症状を呈した肝細胞癌の極めて稀な1例を報告した。
索引用語 肝細胞癌, Tolosa-Hunt症候群