セッション情報 一般演題

タイトル 068:

広範な腹膜播種を呈し,イマチニブ投与後に腫瘍崩壊症候群を来たしたGISTの1例

演者 寺田 修三(市立伊東市民病院 内科)
共同演者 松山 泰(市立伊東市民病院 内科), 小野田 圭佑(市立伊東市民病院 内科), 二村 聡(福岡大学 医学部病理学講座), 川合 耕治(市立伊東市民病院 内科)
抄録 【はじめに】分子標的治療薬の出現により,従来化学療法への感受性が低いとされてきたGIST等の固形腫瘍においても腫瘍崩壊症候群(tumor lysis syndrome:TLS)発症の報告が増えてきている.今回我々はイマチニブ投与後にTLSを呈したGISTの1例を経験したので報告する.【症例】68歳男性.主訴:腹部膨満感.既往歴:特記事項なし.飲酒歴なし.現病歴:3か月前から日常動作が緩慢となり,腹部の膨満感が出現したため,精査加療目的に入院した.入院時現症:JCS1,羽ばたき振戦あり,腹部は著明に膨満,両下肢に圧痕性浮腫あり.血液検査所見:Cre 0.66 mg/dl,UA 7.5 mg/dl,P 3.2 mg/dl,AST 79 U/l,ALT 64 U/l,LDH 420 U/l,NH3 222 μg/dl,肝炎ウイルスマーカー陰性.腹部造影CT:大網,小網,膀胱直腸窩など広範に,新生血管の発達・増生を伴う多結節が集簇した腫瘤を認め,少量の腹水を認めた.入院後経過:失禁や徘徊などの異常行動が顕在化し,腹膜腫瘤による門脈大循環シャント形成が誘因となった高NH3血症による脳症と考えた.経皮的腹膜腫瘍生検にて,KIT陽性,CD34陽性,類上皮細胞型GISTと診断した.第22病日よりイマチニブ400 mg内服を開始したが,第24病日より血清Cre,尿酸,P値の上昇があり(ピーク値Cre 2.96 mg/dl, UA 10.8 mg/dl, P 6.7 mg/dl),clinical TLSと診断した.第25病日にイマチニブを中止,大量補液と尿のアルカリ化,アロプリノール投与とを行い,血清Cre,尿酸値は改善した.第57病日よりラスブリカーゼ併用下にイマチニブを300mgに減量して再開した.血清Cre値の一過性上昇を認めたが,画像上腫瘍は著明に縮小,高NH3血症は改善し,第85病日に退院した.【考察】固形腫瘍においてTLSは稀な合併症であるが,その致命率は約35.5%と高い.GIST治療中にTLSを発症した報告はわずか3例に過ぎないが,うち1例はTLSが原因で死亡している.治療前の高LDH血症,高尿酸血症,腎機能低下はTLS発症のリスク因子とされており,本例のように腫瘍量が多くリスク因子を有するGISTの治療においてはTLS発症に注意が必要と考える.
索引用語 GIST, 腫瘍崩壊症候群