セッション情報 一般演題(研修医(卒後2年迄))

タイトル 062:

成人の特発性腸重積に対し徒手整復のみで軽快しえた一例

演者 竹下 敦郎(済生会松阪総合病院 内科)
共同演者 三吉 彩子(済生会松阪総合病院 内科), 鈴木 康夫(済生会松阪総合病院 内科), 福家 洋之(済生会松阪総合病院 内科), 青木 雅俊(済生会松阪総合病院 内科), 河俣 浩之(済生会松阪総合病院 内科), 橋本 章(済生会松阪総合病院 内科), 脇田 喜弘(済生会松阪総合病院 内科), 清水 敦哉(済生会松阪総合病院 内科), 市川 健(済生会松阪総合病院 外科), 長沼 達史(済生会松阪総合病院 外科), 中島 啓吾(済生会松阪総合病院 内科)
抄録 症例は20歳代女性。主訴は臍周囲痛。既往歴は特記事項なし。現病歴は20xx年8月上旬、冷汗、血便を伴う臍周囲痛が出現し、当院救急受診となった。来院時、腹部は平坦、軟で腫瘤は触知せず、上腹部正中に圧痛を認めたが反跳痛はなく、腸音は亢進していた。血液生化学検査ではWBC6500/mm3, CRP 0.2mg/dl、CK 61IU/l, LDH177IU/l、CEA 1.0ng/ml、CA19-9 17.9U/ml、血液ガス分析ではpH7.465、PCO2 31.4mmHg、HCO3 22.1mmol/lであった。腹部XPでは小腸ガス貯留を認め、腹部造影CT検査では拡張した上行結腸の内部に陥入重積した腸管を認めた。陥入腸管の横断面では,内部に低吸収域と高吸収域が混在する層構造を持つ典型的な target sign を認め、回盲部を先進部とする腸重積と診断した。腸重積部の腸管は造影効果を認めた。腹水は少量あり、リンパ節腫大は認めなかった。腹部エコーでは、病変部の血流シグナルが見られた。血液検査、腹部画像診断より明らかな虚血壊死、腫瘍性病変を認めず、特発性腸重積を疑い、注腸造影を施行した。上行結腸にカニ爪様所見を認め、注腸整復を試みた。整復後の造影では回盲部は狭窄像を呈していた。下部消化管内視鏡検査では回盲部は盲腸の著明な発赤、腫張および易出血性みられたが、腫瘍性病変は認めなかった。特発性腸重積の診断で入院、絶飲食で経過観察とした。翌朝の腹部単純CTでは重積は解除されていた。回腸末端、盲腸、上行結腸の一部の全周性肥厚が見られるものの、明らかな腫瘍性病変は認めなかった。後日施行した注腸検査では回腸までの通過良好であり、上行結腸まで明らかな粗大病変は指摘できなかった。症状は整復後軽快し、入院第8病日退院となった。本症例は腹部超音波検査、CTにて器質的疾患についての評価を行い、徒手整復後下部消化管内視鏡検査で病変部を観察することにより手術を回避することが可能であった。しかし徒手整復後の再発に関しては十分な報告が見られず、今後慎重な経過観察が必要と考えられる。今回成人の特発性腸重積に対し腸切除術を選択せず、徒手整復のみで軽快しえた1例を経験したので報告する。
索引用語 腸重積, 成人