セッション情報 パネルディスカッション18(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

小腸疾患に対する診断治療の現況と今後の展望

タイトル 内PD18-17:

消化管原発濾胞性リンパ腫の小腸病変診断アルゴリズムの確立と治療適応

演者 田利 晶(広島赤十字・原爆病院・食道・胃腸内科)
共同演者 國弘 真己(広島赤十字・原爆病院・食道・胃腸内科), 田中 信治(広島大・内視鏡診療科)
抄録 【目的】消化管原発濾胞性リンパ腫(FL-GI)の消化管病変は十二指腸下行部に最もよくみられるが、小腸にも高頻度に分布している。従ってFL-GIの治療方針の決定には臨床病期(CS)・病理学的悪性度(WHO grade)と共に全ての消化管の精査が必須となる。FL-GIの小腸病変診断のアルゴリズムと治療適応について検討した。【対象と方法】2004年11月から2011年7月の間に受診したFL-GI患者36人(M/F=21/15, age 46-82)を対象として検討した。全例にEGD、CS、PET-CT、造影CT scan (CT/CE+)、骨髄検査、血液検査を実施した。小腸ileusの既往がある1人とileusで発症した2人を除いた33人にカプセル内視鏡(VCE)を、同意が得られた20人にダブルバルーン内視鏡検査(DBE) を実施した。【成績】CS(Lugano)はI:15 (42%)、II2: 11 (30%)、IV: 10 (28%)、WHO gradeは1が33/36 (92%)、2が3/36(8%)であった。小腸検査により空腸に病変を有する患者は18人、回腸に病変を有する患者は19人であった。DBEを実施した20人中15人に空腸病変を、9人に回腸病変を認めた。VCEでは17人に空腸病変を、19人に回腸病変を認めた。DBEにて診断可能であった病変はileusの既往のために実施しなかった1人を除く全ての患者でVCEにより診断可能であった。2人のileus患者は、PET-CTによりFDGの異常集積を伴う腸間膜LNの腫大と小腸壁の全周性の肥厚があり、悪性リンパ腫と診断し手術を実施した。狭窄は無いものの肉眼的に消化管壁の肥厚を伴う病変を有する5人では同部に一致してPET-CTにてFDGの異常集積を認めた。【結論】小腸初回検査時には他のindolent lymphomaとの鑑別診断目的にて生検が可能であるDBEの実施が必須である。経過観察には高い病変の拾い上げ能を有するVCEが有用である。しかしDBEとVCEは通過障害や滞留とそれぞれの限界も有しているため、初回の小腸検査実施前には腸管壁の肥厚の有無や狭窄の有無の診断に有用であるPET-CTを実施するべきであると考えられる。更に治療適応についても検討し呈示する。
索引用語 消化管原発濾胞性リンパ腫, 小腸