共同演者 |
杉山 誠治(木沢記念病院 総合診療科), 吉田 健作(木沢記念病院 総合診療科), 中川 貴之(木沢記念病院 消化器科), 安田 陽一(木沢記念病院 消化器科), 杉山 宏(木沢記念病院 消化器科), 坂下 文夫(木沢記念病院 外科), 尾関 豊(木沢記念病院 外科), 松永 研吾(木沢記念病院 病理診断科) |
抄録 |
【症例】83歳、男性。2012年2月に感冒症状で近医受診した際に貧血を指摘され、GIFが行われたが異常を指摘されず、それ以上の検索は行われなかった。同年5月に他の医療機関で貧血を指摘されたため、7日に精査目的で当院へ紹介入院となった。現症では眼瞼結膜に貧血を認め、腹部は平坦、軟で、圧痛は認めなかった。検査所見ではHb 7.3g/dlと貧血を、CRP 12.01mg/dl, WBC 13500/mm3と炎症所見を認めた。貧血の精査のためCFを施行したところ、Rsに全周性の2型病変を認め、生検で高分化腺癌と診断された。腹部CTでは直腸の壁は肥厚し、膀胱背側に液貯留とairを認め、直腸癌の穿孔による骨盤内膿瘍が疑われた。そこで注腸を行ったところ、Rsでの全周性狭窄所見を認めるものの、腸管外への造影剤の漏れは認められなかった。腫瘍進展範囲把握のため膀胱鏡を行ったところ、膀胱後壁の粘膜に浮腫状変化を認め、腫瘍の直接浸潤も否定できない状態であった。しかし、腹部症状は軽度であったため、まずはSBT/CPZの投与を開始した。第14病日の腹部CTで膿瘍腔は縮小傾向を認めた。第20病日に膀胱鏡を再度行ったところ、膀胱後壁に浮腫性変化が残存認めるものの範囲は縮小を認めた。造影MRIでは、結腸と膀胱後壁に膿瘍腔の一部残存を認めるのみで膀胱浸潤は否定的であった。そこで第38病日に直腸高位前方切除術+D2郭清が行われたが、膀胱については浸潤ないと診断し温存した。摘出標本では全周性の2型病変を呈し、腫瘍中心部に10mm長の穿孔部を認めた。病理組織学的所見では、tub2, pSE, ly2, v2, pPM0,pDM0,pRM0のstagelllaであった。術後経過は良好で第52病日に退院となった。【結論】本症例では穿通により直腸前方に膿瘍を形成し、一部膀胱まで波及していたため、膀胱への腫瘍浸潤の有無の判断に苦慮をした。抗生剤投与で膿瘍の縮小化が得られたため膀胱浸潤を否定した。その後膀胱を温存し待機的に手術を行った。膿瘍合併の大腸癌の治療方針について若干の文献的考察を加え報告する。 |