セッション情報 シンポジウム 「自己免疫関連消化器疾患の診断と治療」

タイトル S-004:

自己免疫性膵炎の診断におけるEUS-FNAの位置付け

演者 鷲見 肇(名古屋大学大学院医学系研究科 消化器内科学)
共同演者 廣岡 芳樹(名古屋大学医学部付属病院 光学医療診療部), 後藤 秀実(名古屋大学大学院医学系研究科 消化器内科学DELIMITER名古屋大学医学部付属病院 光学医療診療部)
抄録 【目的】自己免疫性膵炎診断基準2011におけるEUS-FNAの位置付けについて検討した。【方法】対象は2006年1月より2011年12月までに画像診断にてAIPが疑われEUS-FNAを施行した44例。全44例を診断基準2011を用いて最終診断(確診、準確診、疑診、診断不能、その他)し、FNA所見と比較検討した。FNAは22G穿刺針を第一選択に使用し(2例は25G)、lymphoplasmacytic sclerosing pancreatitis(LPSP)の有無を検討した。なお、LPSP陽性は、1:線維化を伴う高度のリンパ形質細胞浸潤、2:IgG4陽性形質細胞浸潤>10個/HPF、3:花筵状線維化、4:閉塞性静脈炎のうち2項目以上認めるものと定義した。検討項目は以下の3項目である。1)全44例の最終診断の内訳。2)最終診断とFNA所見の比較。3)IgG4陽性(血清IgG4≧135mg/dl)21例と陰性13例の患者背景(年齢、性別)及びFNA所見の比較。【成績】1)44例の内訳は確診18例、準確診5例、疑診14例、診断不能5例、膵癌2例であった。膵癌の1例は組織診断を除いた診断基準では準確診でありFNAにて癌と診断された。2)膵癌を除いた42例におけるLPSP陽性率は31%(13/42)であった(確診56%(10/18)、準確診20%(1/5)、疑診14%(2/14)、診断不能0%(0/5))。FNAの付加により、組織診断を除いた診断基準で準確診および疑診であった1例づつが確診へ格上げされ、診断不能の5例中4例が準確診へ、1例が疑診へ格上げされた。格上げ例の特徴は、限局性膵腫大を認めた症例が7例、膵管像の得られなかった症例が4例であった。3) IgG4陽性例(67.2 ±8歳、男女比:17:4)と陰性例(48.4±15歳、男女比:10:3)の両群ともに男性が多く、IgG4陰性例で有意に若年であった(P=0.0008)。LPSP陽性率はそれぞれ48%(10/21)、8%(1/13)とIgG4陽性例で高かった。またIgG4陰性例中2例で、granulocytic epithelial lesion(GEL)を疑う所見を認めた。【結論】EUS-FNAは膵癌との鑑別に重要であり、特に限局性膵腫大を呈する例や膵管像の得られない例の診断に有用である。またIgG4陰性例の中には、GELを特徴とする2型AIPが存在する可能性がある。
索引用語 自己免疫性膵炎, EUS-FNA