共同演者 |
菊山 正隆(静岡県立総合病院 消化器内科), 永倉 千紗子(静岡県立総合病院 消化器内科), 上田 樹(静岡県立総合病院 消化器内科), 奥野 真理(静岡県立総合病院 消化器内科), 山田 友世(静岡県立総合病院 消化器内科), 黒上 貴史(静岡県立総合病院 消化器内科), 白根 尚文(静岡県立総合病院 消化器内科), 鈴木 直之(静岡県立総合病院 消化器内科), 京田 有介(静岡県立総合病院 外科), 渡邊 昌也(静岡県立総合病院 外科), 鈴木 誠(静岡県立総合病院 病理診断科), 室 博之(静岡県立総合病院 病理診断科) |
抄録 |
[症例]39歳男性[主訴]皮膚の掻痒,褐色尿[現病歴]2011年4月より主訴を自覚し,近医受診。同院の採血で肝胆道系酵素の上昇を認めたため当院に紹介となった。 [既往歴]特記事項なし[家族歴]兄がFAPで結腸亜全摘実施。母が大腸癌で逝去。母方の祖父が大腸癌。[身体所見]皮膚と眼瞼結膜の黄染以外に特記事項なし。 [検査結果]T-Bil=4.4,AST140,ALT270,γ-GTP680.と肝胆道系酵素の上昇を認めた。腹部ダイナミックCTにて乳頭部に20mmの腫瘤性病変を認め,十二指腸内腔に突出し.膵実質よりも造影効果が弱く,早期相と後期相で造影効果に差がみられなかった。また胆管拡張(最大18mm)を認めた。明らかな遠隔転移を認めなかったが,結腸はび漫性に壁肥厚を呈していた。超音波内視鏡検査にて乳頭部腫瘍は,膵への明らかな浸潤は認めず,十二指腸の筋層は肥厚していた。乳頭部腫瘍の生検から中分化から高分化腺癌を認めた。下部消化管内視鏡検査では,全結腸に無数のポリープを認め、下行結腸には40mmの絨毛様腫瘍を,直腸にはRa-Rbに30mmのIs病変を認め,深達度MP以深と考えられた。[経過]FAPと乳頭部癌と診断した。ENGBDを留置して減黄した後に,まず幽門輪温存膵頭十二指腸切除術後実施した。切除病理にてpT3,pN2,sM0.INFβ,ly1,v1,pn0,pPanc0,pDu1,pEM0,stage3であった。術後約3ヶ月後に結腸全摘術を実施した。切除病理にて,背景粘膜には径10mm以下のポリープを1000個近く認め,直腸癌は深達度MP,INFβ,ly0,v0,S状結腸腫瘍は高分化型管状腺癌で深達度sm,INFβ,ly0,v0であった。術後半年間補助化学療法を実施していたが術後半年で多発肝転移を認め,切除不能大腸癌肝転移として,術後約1年の現在,全身化学療法を実施している。 [結語]FAPに伴う乳頭部癌の切除症例を経験したので報告する。本症例のように,家族歴が明確である場合には,遺伝子検査を行う病院と連携し幼少からの精査,治療,予防的な結腸全的が望ましいとされている。結腸の精査のみならず,十二指腸乳頭部癌の併発も多数報告されており慎重な定期検査が肝要である。 |