セッション情報 シンポジウム 「自己免疫関連消化器疾患の診断と治療」

タイトル S-005:

自己免疫性膵炎の各診断基準における診断能の比較検討

演者 夏目 まこと(岐阜県立多治見病院 消化器内科)
共同演者 奥村 文浩(岐阜県立多治見病院 消化器内科), 佐野 仁(岐阜県立多治見病院 消化器内科)
抄録 【目的】自己免疫性膵炎(AIP)の新たな診断基準であるInternational Consensus Diagnostic Criteria(ICDC)、臨床診断基準2011(2011年基準)とこれまでの診断基準である臨床診断基準2006 (2006年基準) の診断能を検証する。
【方法】1998年~2011年に当院でAIPと診断された21例(男性16例、女性5例、平均年齢66.4±9.0歳)を対象とし、2006年基準、2011年基準、ICDCの各診断率を、対象全体と膵腫大の項目別(diffuse 9例、segmental/focal 12例)でretrospectiveに比較検討した。
【結果】2006年基準、2011年基準、ICDCの診断率は、全体では81.0% (17/21)、95.2% (20/21)(確診18例、準確診2例)、100% (21/21)、diffuseで66.7% (6/9)、100% (9/9)、100% (9/9)、segmental/focalで91.2% (11/12)、91.2% (11/12)(確診9例、準確診2例)、100% (12/12)であった。2006年基準で診断できなかった4例 (diffuse3例、segmental/focal1例)はいずれもERP所見が得られなかった症例であり、diffuse症例では2011年基準、ICDC ともに全例確診となったが、 segmental/focal症例はICDCではdiagnostic steroid trialにて確診となったが、2011年基準では診断できず、EUS-FNAを行っていた場合は準確診と診断可能であった。2011年基準で準確診となった2例は、segmental/focal症例で、ERP所見、IgG4値は満たしたが、other organ involvementやdiagnostic steroid trialを満たさない症例で、2006年基準、ICDCでは確診症例であった。1例は自然軽快し、もう1例は胆嚢ポリープに対し胆嚢摘出術を施行し、IgG4関連胆嚢炎と診断され、術中膵生検で病理学的確診所見を認め、ステロイド治療が行われた。
【結論】自験例の検討では、AIP診断率はICDC、2011年基準、2006年基準の順で高かった。2011年基準では、診断にERP所見が必要ないdiffuse症例で診断率が上昇したが、診断にERP所見が必要となるsegmental/focal症例では2006年基準と変わらない診断率であり、EUS-FNAやdiagnostic steroid trialを適切に行うことで診断率を向上させうることが示唆された。
索引用語 自己免疫性膵炎, 診断基準