共同演者 |
澤木 明(名古屋第二赤十字病院 消化器内科), 野尻 優(名古屋第二赤十字病院 消化器内科), 大脇 俊宏(名古屋第二赤十字病院 消化器内科), 青木 美帆(名古屋第二赤十字病院 消化器内科), 岩崎 弘靖(名古屋第二赤十字病院 消化器内科), 野村 智史(名古屋第二赤十字病院 消化器内科), 金本 高明(名古屋第二赤十字病院 消化器内科), 日下部 篤宣(名古屋第二赤十字病院 消化器内科), 蟹江 浩(名古屋第二赤十字病院 消化器内科), 坂 哲臣(名古屋第二赤十字病院 消化器内科), 山田 智則(名古屋第二赤十字病院 消化器内科), 林 克己(名古屋第二赤十字病院 消化器内科), 折戸 悦朗(名古屋第二赤十字病院 消化器内科) |
抄録 |
切除不能食道癌の予後は不良であるが,その全身化学療法の標準治療は5-fluorouracil(FU)とシスプラチン(CDDP)である.本治療では,腎障害,骨髄抑制,粘膜障害などの有害事象がみられるが,稀な有害事象として高アンモニア血症が報告されている.今回5-FU+CDDP投与後,高アンモニア血症による意識障害を来した切除不能食道癌の1例を経験したので報告する.症例は67歳,男性で,主訴は嚥下困難であった.既往歴は10歳代に虫垂炎で手術.35歳時に胃潰瘍で手術.糖尿病,高血圧.HBVの感染既往あり.生活歴は喫煙なし,飲酒はウイスキー100ml/日.現病歴は2012年3月より,嚥下困難を自覚し当院耳鼻咽喉科を受診.CTにて食道腫瘍,腹部リンパ節腫大を認めたため,当科紹介受診.精査にて食道癌(扁平上皮癌,中分化型),多発リンパ節転移を認めたことからstageIVa(T3N4M0)と診断した.切除不能と判断し,同年5月より化学放射線療法を開始した(5-FU 700mg/m² Day1-4,CDDP 70mg/m² Day1).Day7より,意識障害(JCS I-2)が出現した.画像所見において白質脳症の所見も認めず,また血中電解質濃度にも異常はなく,肝機能障害もなかったが,血中アンモニア値132μmol/Lと高アンモニア血症を認めた.脳波所見でも代謝性脳症を疑う三相波がみられた.その後,血中アンモニア値の低下とともに意識障害は改善され,症状は消失した.肝機能はもともと正常範囲内であり,高アンモニア血症を来した原因としては5-FUが最も可能性が高いと考えらえた.肝機能異常のない例に対する5-FU投与の有害事象として高アンモニア血症を来した1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する. |